疫学研究室

全国の年間空中花粉調査

花粉症の予防・治療に情報を提供する目的で全国各地14施設で重力方による空中花粉調査を行っている。2006年関東地方ではスギ・ヒノキ科花粉が少なかったが、九州では例年より多く、ヒノキ科がスギ花粉より大量に飛散した。スギ・ヒノキ科に続いてイネ科花粉が初夏に捕集され、秋にはブタクサ・ヨモギ属・カナムグラ花粉全国的に捕集された。11月にはごくわずかなスギ花粉が捕集されている。2007年は関東地方はスギ花粉飛散開始時期が早く、九州地区とほぼ同じ頃に飛散し始めた。関東地方では昨年より多く、九州ではスギ花粉は例年よりやや少ない状況でヒノキ科は激減した。

福岡県、九州地区花粉情報

福岡件医師会、九州各県医師会、アレルギー協会九州支部と協同で、2007年2月1日~4月15日までのスギ・ヒノキ科花粉飛散期間に福岡県20施設の花粉測定医療機関、耳鼻科10施設、眼科4施設でスギ花粉情報、九州地区30数件の医療機関で空中スギ・ヒノキ科花粉を測定し花粉速報活動を行った。スギ花粉は2月上旬から約1ヶ月間、ほぼ例年通りのスギ花粉が飛散したが、ヒノキ科が非常に少なく飛散期間が短期間であった。スギ花粉症患者は例年通り中等度の悪化が見られたが、ヒノキ科花粉が少ないだけ悪化時期が短縮した。花粉情報で少ないと情報を出し、安心して治療を中止すると症状の悪化が見られるため少量飛散時の情報提供は工夫を必要とした。

リアルタイム花粉モニター稼動

環境省、日本気象協会がKH3000のリアルタイムモニターを九州各県に数台ずつ設置し、4月から稼動開始した。ダーラム法との相関関係を調査するために興和リアルタイムモニターを屋上に設置し、年間の花粉採集が開始され、協同で調査結果を解析する予定である。

体積法による空中花粉調査

2003年から国立病院機溝相模原病院臨床研究部と協同でBurkardSamplerを用いて年間の花粉抗原を測定している。従来のダーラム法との結果と相関性を検討し、非常によく相関していることがわかった。しかし、イネ科など他の花粉抗原との相関性は低いため、過去のダーラム型の捕集器による結果との解釈を検討する予定である。

屋久島のスギ・ヒノキ科花粉調査

富山大学医学部公衆衛生学教室と協同で屋久島の花粉抗原とスギ花粉症患者の疫学調査を継続している。

黄砂とスギ花粉

最近中国から飛来する黄砂がアレルギー疾患に影響を及ぼすことが指摘されつつあり、聖路加病院耳鼻科、大分看護大学と協同でスギ花粉と黄砂との関係について検討し、黄砂観測日に花粉が増加する可能性が得られた。さらに救急車搬送頻度やスギ花粉症患者との関係を調査する予定である。