病院案内

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院長ご挨拶

院長 𠮷田 誠

国立病院機構福岡病院は、全国に140病院を擁する国立病院機構の一翼を担っています。その中で、当院は、職員同士が切磋琢磨する気風、高い専門性に基づいた良質な医療を誇ると同時に、基本理念「思いやり」に根差した患者さんにやさしいスタッフの育成にも力を入れている病院です。特に呼吸器・アレルギー・小児・障害者医療の分野では、多くの専門医・指導医はもとより、看護師やメディカルスタッフにも専門資格の認定者が多数在籍しています。このように、長年培われた伝統の中で育まれた病院の豊かな個性を、更に伸ばしていくことを常に目指しています。

当院のもう一つの特色は、研究が盛んな風土です。臨床研究や看護研究は、日常診療で直面する多様な問題を解決していくために不可欠であり、医学の進歩の礎となります。また優れた新薬をより早く患者さんに届けるために、多くの臨床治験を引き受けています。コロナ禍中には、新型コロナウイルス治療薬の治験も受託いたしました。ご協力いただいた多くの患者さんに、この場をお借りして感謝申し上げます。

また、当院は学術講演会や研究会の開催実績も豊富です。2024年2月に日本アレルギー学会九州沖縄支部学術集会、同年3月には九州地区重症心身障害研究会を主催いたしました。さらに2025年3月に日本呼吸ケアリハビリテーション学会九州沖縄支部学術集会、2026年3月に日本呼吸器学会九州沖縄支部学術集会、2027年3月には医療マネジメント学会福岡県大会の会長施設も務める予定です。

全ての診療科を有する総合病院ではありませんが、高齢化社会の進行に伴い増加し続ける呼吸器疾患、少子化で一層大切に育てていきたい子供たちの健康、ストレス社会を背景に増え続ける心身症、食生活や住環境の変化で増加し続けるアレルギー疾患、守り続けなければならない重症心身障害者の医療など、高い専門性と充実した診療科間の連携体制を活かして、変化し続ける医療のニーズに臨機応変に対応しながら、これからも地域医療に貢献していく所存です。

2024年4月 院長 𠮷田 誠

 

病院の特長・方針

当院の歴史は、今から約100年前の大正15年(1926年)6月に福岡市立屋形原(やかたばる)病院として発足したことに遡ります。昭和22年に厚生省に移管して国立療養所屋形原病院となり、昭和46年には屋形原病院の分院だった福岡厚生園と統合して国立療養所南福岡病院と改称、結核が長らく日本人の死因第1位だった時代から国立療養所として結核医療を支えてきました。しかし、結核患者の減少に伴い昭和56年から段階的に結核病棟が集約され、平成16年4月に独立行政法人化で国立病院機構福岡病院となったのと期を同じくして、最後の結核病棟が閉鎖となりました。

結核病棟集約と併行して、平成11年には政策医療として「免疫アレルギー基幹医療施設」として機能付され、平成13年には施設基本構想として九州ブロックの「免疫異常」に関する中心的施設として高度で専門的な医療・臨床研究・教育研修及び情報発信の機能を備えるとともに「呼吸器疾患」に関する医療を行う施設としての機能も付与されました。呼吸器およびアレルギー・免疫疾患に特化した当院の特色はこの時期に方向付けられ、現在に至るまで引き継がれています。

 

1. 呼吸器医療

    ◦ 呼吸器内科

    ◦ 循環器内科

    ◦ 心療内科

    ◦ アレルギー科

    ◦ 小児科

    ◦ 呼吸器外科

    ◦ 放射線科

    ◦ 感染症内科

    ◦ リハビリテーション科

    ◦ 歯科

呼吸器内科を始めとする内科系診療科と呼吸器外科の医師に加え、認定看護師・理学療法士・管理栄養士・薬剤師など、多職種が協働して、急性期から回復期・慢性期まで一貫して患者さんに寄り添う息の長い医療を提供しています。全ての呼吸器疾患を対象としており、とりわけ喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)や間質性肺炎の診療が秀抜です。

平成3年3月に、呼吸不全施設としての診療機能充実のためにリハビリテーション科が設立されました。現在では、慢性呼吸不全の患者さんのQOL(Quality of life=生活の質)向上を目指した包括的呼吸リハビリテーションのみならず、呼吸器外科手術後のリハビリテーション、慢性心不全や心筋梗塞後の心臓リハビリテーション、重症心身障害児(者)リハビリテーションなど、多分野で利用されています。特に慢性呼吸不全で在宅酸素療法を受けている患者さんは年々増加しており、呼吸リハビリテーションの果たす役目は大きいと考えられます。専従スタッフとして、医師・認定看護師・理学療法士・作業療法士・臨床検査技師・臨床心理士・臨床工学技士が配置され、チーム医療にあたっています。呼吸リハビリテーションを主軸とした設備は全国でも希であり、高齢化社会を背景に増加する医療ニーズに応えるべく、今後発展していくものと考えております。

平成16年4月1日の独立行政法人化に伴い結核病棟が閉鎖されたため、排菌(喀痰検査で結核菌陽性)のある肺結核の入院治療はできなくなりましたが、外来結核診療や、結核が疑われる患者さんの検査入院は従来通り実施しています。近年増加傾向にある非結核性抗酸菌症など、結核以外の呼吸器感染症の診療体制は充実しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期には、小児科と協力して乳幼児から後期高齢者まですべての年齢で入院を受け入れた実績もあります。

呼吸器外科は、肺癌のみならず、膿胸・気管支瘻、胸周囲膿瘍など、高度な技術を要する手術も手掛けています。また、術後も長期に亘り患者さんに寄り添う診療を継続しています。隣接の九州がんセンターとの連携を密接にしており、術前の放射線療法や化学療法はもとより外科医の相互の研究交流も図っています。日本胸部外科学会、呼吸器外科学会、小児外科学会の認定施設となっています。

心療内科は、喘息や軽症のうつ病などの心身医学に歴史があります。近年はこれらの心身医学に加え、慢性咳嗽(長期間持続する咳)の診療と研究にも力を入れています。

循環器内科では、慢性心不全の治療や心臓リハビリテーションを行っています。呼吸器疾患に併発することの多い肺高血圧症の正確な診断と評価のために右心カテーテル検査を、2024年5月の導入に向けて準備中です。

 

2. アレルギーセンター

    ◦ 呼吸器内科

    ◦ アレルギー科

    ◦ 心療内科

    ◦ 小児科

    ◦ 皮膚科

    ◦ 耳鼻咽喉科

平成31年4月に福岡県で唯一のアレルギー疾患医療拠点病院に指定されたことを機に、アレルギーセンターを開設しました。関連する6診療科(アレルギー科・皮膚科・耳鼻咽喉科・小児科・呼吸器内科・心療内科)と専門資格を持つ看護師・栄養士・薬剤師などが相互に連携して、複数のアレルギー疾患を持つ患者さんにも柔軟に対応できる体制を整えました。喘息・食物アレルギー・薬剤アレルギー・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・花粉症を始めとするすべてのアレルギー疾患を総合的に診療しています。

福岡県の花粉情報も発信しています。昭和46年(1971年)から空中花粉調査を行っており、全国の定点から検索花粉が送られて解析され、毎年全国花粉マップが作成されています。現在は、福岡県、九州全域における花粉情報活動を各県医師会、気象協会、耳鼻科医会と共同で行っています。前年の気象データに基づいた、花粉飛散予報も発信しています。

アレルギー疾患医療拠点病院モデル事業に4年連続で採択され、アレルギー相談室や就労両立支援事業に、全国に先駆けて取り組んでいます。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、副反応のリスクが高いアレルギー疾患の患者さんを対象にワクチンを安全に接種した実績もあります。

 

3. 小児医療

    ◦ アレルギー科

    ◦ 小児科

    ◦ 皮膚科

    ◦ 耳鼻咽喉科

小児呼吸器疾患では、気道感染症・気管支喘息の診断・治療を行っています。一般のクリニック等では診断・管理に苦慮する小児喘鳴については、クリティカルパスを用いて専門的な検査(呼吸抵抗測定・経皮酸素飽和度測定・嚥下造影・24時間食道pHモニタリング)の結果に基づいた診断・治療を行います。気管支喘息の診断は血液検査やレントゲン写真、肺機能検査、運動負荷試験、気道の炎症や過敏性を調べる検査など用いて行います。喘息管理は、発作の頻度・重症度に応じた治療と生活指導を行い、入院を要する中等症~重症の症例に対しては、呼吸器管理も含め専門的な治療を提供します。また、難治例に対し生物学的製剤の治療導入を行っており、導入件数は西日本でも有数の施設です。喘息児を対象とした夏季サマーキャンプは新型コロナ流行で休止しておりましたが、新型コロナ5類以降を踏まえ、再開に向け検討を重ねております。

小児アレルギー疾患では、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎などの症例数は日本国内においても有数の施設となっています。アトピー性皮膚炎は、適切なスキンケアおよび外用方法を入院・外来ともアレルギー教育専門看護師が丁寧に指導いたします。外来治療が基本ですが、それだけでは改善にくい場合にはスキンケア入院(2泊3日の短期入院)により良好な成績と適切な手技取得によるその後の維持を可能となります。食物アレルギーは外来診療を中心に、専門的な検査(食物アレルゲン抗体検査、プリックテストなど)を行います。必要に応じ日帰り入院で食物経口負荷試験を行い、確実な診断と安全な摂取継続による寛解導入を目指します。

小児睡眠時無呼吸症候群は閉塞性のものが多く、診断は終夜睡眠時にポリソムノグラフィーを用いる一泊の検査入院で確実に診断を行うことができ、適切な治療提供を可能としています。

小児肥満は2016年から再び増加傾向で、11歳男児13.3%、女児9.4%です。学童児のうちに肥満を改善し、将来の生活習慣病を予防していくことが重要です。当科では学童肥満児を対象に肥満改善入院を行い、日課にそった規則正しい生活、管理栄養士による専門的な食事療法、理学療法士による効果的な運動療法を行います。約2~3週間の肥満改善入院で、体重減少は平均マイナス4.2kg、肥満度の減少は平均マイナス11.2%、除脂肪量(筋肉増加量)は平均プラス4kgと良好な結果を得ています。

これら以外の一般の小児疾患(肺炎・気管支炎、中耳炎、尿路感染症、胃腸炎など)の入院も積極的に受け入れており、新型コロナ感染症流行後、令和2年度277例まで減少していた小児の入院数は、令和3年度391例、令和4年度545例、令和5年度642例と増加傾向です。

新たに取り組んでいる事業として、年々増加しているNICU等に長期入院している医療的ケア児の退院支援を行っています。2023年10月より開始された福岡県小児等在宅医療推進事業における福岡地区の小児等地域療育支援病院2施設のうちの一つに指定されています。

 

4. 障害者医療

    ◦ 呼吸器内科

    ◦ 心療内科

    ◦ 小児科

    ◦ 呼吸器外科

    ◦ 放射線科

    ◦ リハビリテーション科

    ◦ 歯科

当院重症心身障害児(者)病棟は昭和44年4月に開設され、当時の九州大学小児科、竹下健三講師以下、神経グループの協力のもとに、医療と教育を行ってきました。令和6年4月現在、126名の重症心身障害児(者)が入所しています。以前は、三つの病棟のうち一つは医療中心、二つは療育中心病棟となっていましたが、近年、入所者の高齢化、重症化に伴い病棟ごとの機能の違いは小さくなりました。

重症患者の増加に伴い、呼吸管理を中心とした医療的ケアを必要な方が増加しています。この15年間で、経管栄養(胃瘻、腸瘻など)は21名増加し54名、気管切開患者は22名増加して50名、人工呼吸器使用者は20名増加して37名となり(2024年4月現在)、全国の国立病院機構の中では最も人工呼吸器使用の多い重症心身障害児(者)病棟の一つです。

加齢とともに機能が低下していく入所者が増え、また外部からの入所者の多くは呼吸管理を必要とする重症児であるため、令和6年4月現在、医療的対応が密である超重症児は39名、準超重症児は25名と、この15年でそれぞれ9名と18名増加しました。

在宅支援も積極的に取組んでいます。短期入所(ショートステイ入院、レスパイト入院)は、従来重症心身障害病棟で実施していましたが、現在は病棟の機能分化に伴い、令和3年10月より一般病棟で実施する体制を整えました。現在2床運用としており、令和4年度は利用日数365日、のべ利用者数69人、令和5年度は利用日数485日、のべ利用者数82人でした。短期入所も医療的ケアのある重症心身障害の方々であり、看護/介護が常時必要です。介護されているご家族の所用(冠婚葬祭等)や休息などの際、短期入所を利用していただくことで在宅生活の継続を支援します。

介護者の高齢化や疾病により自宅療養が困難になった場合、当院では入所相談から施設見学、入所に至るまで自治体(障害福祉課)や相談支援事業所と連携を図りご家族をサポートしております。また、積極的に成年後見制度利用を推進し、入所者が安心して生活できるための権利擁護について努めております。