今月の特集

2021年10月度 今月の特集「皮膚の日」

はじめに

11月12日は「皮膚の日」です。皮膚の日は、一般の方々に皮膚について関心を持っていただき、皮膚の健康と皮膚疾患についての正しい知識を普及するため、そして皮膚科専門医療に対する理解を深めていただくために日本臨床皮膚科医会が制定した記念日でして、みなさんお気づきのことと思いますが、「11」「12」を「いいひふ」と読んでいます。
1989年(平成元年)に制定されましたので、実は30年以上の歴史があります。

この「皮膚の日」にちなみまして、今月の特集では皮膚の基礎知識、豆知識をご紹介しようと思います。

皮膚って、薄いけれどすごい臓器

皮膚は、私たちの身体表面をラップのように覆っている薄い膜のような存在ですが、生命体を外界から保護する、水分の喪失を防ぐ、体温を調節する、感覚器としての役割を果たすなど、生命の維持に必要不可欠な種々の機能を備えている、とても重要な臓器です。

表皮・真皮・皮下組織(皮下脂肪)の3層からなり、図のようなイメージです。

皮下脂肪を除いた皮膚の厚さは1.5~4㎜ととても薄いですが、その面積は広げると成人で約1.6㎡、皮下組織(皮下脂肪)を含めた重量は体重の約16%に及び、人体最大の臓器と言われています。

表皮という場を作り上げるのは「角化細胞」、真皮という場を作り上げるのは「線維芽細胞」、皮下組織という場を作り上げるのは「脂肪細胞」ですが、ほかにも様々な細胞、組織をかかえていて、皮膚色を決め、紫外線などから人体を守る“メラニン”を産生する細胞、侵入してこようとする物質をパトロールする細胞、侵入してきた有害物質を協力し合いながら排除する細胞たち、毛の組織、皮脂の組織、汗の組織、神経組織、血管組織などなど、実に大所帯です。

皮膚の「バリア機能」

皮膚の働きの中でもとくに重要と言えるのが「外界からの保護」でして、その大事な役割について詳しくご紹介します。

前項でも述べたように、皮膚では有害物質が自由に侵入してこないよう様々な細胞が活躍していますが、まず防波堤として頑張っているのが皮膚最外層にあたる表皮でして、図のようにレンガ壁のような層を築き、上層では隙間を皮脂膜、細胞間脂質で埋めて、その下に第二の関門も設けて、物理的に異物が入ってこれないようにしています。

物理的にブロックするのみならず、表皮の層を構成している角化細胞自身が、外界から侵入しようとする物質をパトロールし、抗菌物質や、他の細胞たちへの合図となる様々な物質を活発に産生・分泌して、排除機構の第一段階としても活躍しています。

これらをまとめて「皮膚のバリア機能」と呼んでおり、スキンケアを考える際のキーワードになる言葉と言えます。近年はスキンケア製品の宣伝などでも使われていますので、みなさんも時々耳にされていることと思います。

スキンケアで「バリア」を保とう

乾燥する季節になりましたが、皮膚のバリア機能は、皮膚が潤っていてこそ保たれます。肌が“荒れた”所は、バリアが目に見えて破壊されてしまった所と言えます。

皮膚の「バリア」を意識して、保湿剤や荒れを治す塗り薬を上手に使ってスキンケアしていきましょう。

国立病院機構 福岡病院 皮膚科科長 西江 温子

今月の特集 バックナンバー

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