心理研究室

研究者は心療内科の佐藤純香、横田欣児であり、厚生労働省班研究の一つとして行われた(分担研究者:西間三馨)。要約すると、以下の研究報告を行った。

成人気管支喘息(心身症)のガイドラインを用いた臨床的実証研究

【はじめに】

2002年に作成された、気管支喘息(心身症)の診断治療ガイドラインを臨床に応用し、治療に役立つ面を探して有効性と簡便性に優れたものに修正し、一般臨床医に利用しやすい形で提案する事を研究目的としている。平成17年度は、小児から当院に20年以上通院している喘息患者を調べたところ、大多数(81.8%)が心身症で、ストレスの関与が大きく、うつ感情並びに不安要素が共に高く、人生に不満を抱いているという結果が得られた。平成18年度は、その原因を心身症治療ガイドラインからの視点から検討するために、喘息についての患者の理解と経過との関連、治療コンプライアンスの問題について検討した。

【方法】

① 当院を20年以上通院している40歳以下の気管支喘息患者に、心身症診断用調査表A「喘息の発症と経過に関する調査用紙」、B「喘息日常生活調査表」とC「喘息の理解に関する調査表」、D「通院状況に関する調査票」、性格傾向をみる心理テスト(TEG)記入を求め、心身症との関連を調査した。

② H16年10月からH17年6月までの間に当院を初診した気管支喘息患者に、調査表B-Dと上記心理テストを記入してもらい、心身症の傾向と病状との関連を検討し、20年以上通院している①の患者との違いを比較検討した。

【結果】

① 小児科より20年以上通院している9名(男5、女4)から回答を得た(平均年齢37.89歳)。心身症診断用調査表Aの総合点は平均25点であり、6人が心身症とされる23点以上だった(66.7%)。9名のうち4名は成人になった現在も小児科に通院しており、心療内科を通院しているものは4名で、そのほとんどが主治医にすすめられ受診してるが、本人も心身両面の治療が必要であると感じていた。通院状況としては、定期通院が5名、不規則だが服薬を守っている人が2名、不規則に守れてない人が1名であり、全員ほぼ定期通院していた。定期通院してない理由は、通院していることを家族や職場に知られたくないという人が1名、薬さえあれば、自分でコントロールできると答えた人が1名であった。社会生活については、正社員として働いている人は2名のみで、喘息が障害になっている人が6名だった。結婚している人は1名のみで、病気が結婚の障害になっていると回答した人が5名に上った。家族関係については、第1子である人が5名、喘息になったときに家族に協力を求める人は5名で、心配をかけないように元気な振りをすると回答した人が3名であった。

② 該当する喘息患者の内、12名(男3、女9)から回答を得た。通院状況としては、定期通院できていると回答した人が7名、不規則な受診だが、薬がきれないようにしていた人が1名、悪くなったときだけ受診すると答えた人は2名であった。定期的に通院できないと答えた人の理由としては、薬さえあれば、自分でコントロールできると答えた人が3名で、発作が起きなければ治療が必要ないと回答した日とが1名であった。治療については、内服、吸入が飲み忘れなくきちんと行えていると回答した人が6名、月に数回忘れると回答した人が3名、きついときだけ使用している人が1名であった。

【結論】

小児科より20年以上当院を通院している気管支喘息患者は、受療行動に問題がある人は少なく、喘息に対する知識も受診後1年が経過した新規通院群より上回っていた。心身医学的な面に付いても理解しているが、しかし、それだけの知識と治療を受けていても、喘息のコントロールが難しく、喘息を障害と感じ、就職や結婚に支障をきたしている状態であった。

【考察】

喘息心身症治療ガイドラインンは、第1ステップでは気管支喘息に付いての十分な教育を行い、薬物や生活の改善により喘息をコントロールする事であり、第2ステップでは患者の治療コンプライアンスと生活習慣の指導を通して、患者の抱える困難な問題に心理社会的面より関与してゆく事である。これらを終わってそれでも治療に困難な場合、第3ステップとして今度は心身医学的治療に真正面から取り組むことになり、その方法をガイドラインの中に解説している。今回の我々の調査の結果は、20年以上の長期に渡って病院に通院している喘息患者では、ステップ1と2は既に終わっていて、第3ステップに取り組んでゆかないといけない事を示している。当然の結果であろうが、それが明らかになった事から、この治療ガイドラインは妥当なものと考えられる。