水泳教室喘息児童の喘息重症度と呼吸機能、QOLの変化
喘息の小学生が当院水泳教室に参加することにより、その喘息重症度、呼吸機能、QOLがどのように変化するかを検討した。水泳教室参加時の喘息重症度は間欠型11例、軽症持続型13例、中等症持続型4例、重症持続型3例であった。1年間の水泳教室参加後には%FVC,%FEV1,FEV1%,%PEFRは変化なく、%V50が有意に上昇していた。治療を考慮した喘息重症度や治療ステップは変化ないが、持続型の症状があった5例中4例が間欠型に軽快していた。QOLに変化はなかった。アレルギー性鼻炎重症度および下甲介粘膜色は水泳教室参加前後で変化なかった。水泳教室は重症な患者でも続けることができた。
Borg scaleによる気管支喘息児の呼吸困難感の評価
気道過敏性検査時と運動誘発喘息検査時にBorg scaleを用い自覚的呼吸困難感を検討した。
a. 気道過敏性検査一秒量が20%低下した時点での呼吸困難感(PS20)は気道過敏性が低い喘息児が強いのに比べ、亢進している喘息児では弱い。気道過敏性が高い喘息児では一秒量が大きく低下してはじめて呼吸困難を自覚しはじめる。以上より重症喘息児では呼吸困難を自覚しにくい。特に重症児では客観的パラメーターを用い管理する必要がある。
b.運動誘発喘息検査喘息重症度別には運動強度の自覚に差はなかった。運動誘発喘息重症群では運動誘発喘息陰性群に比較して運動直後から呼吸困難を強く自覚し、運動5分後には重症群では陰性群、軽症群に比較し、呼吸困難を強く自覚していた。軽症群では呼吸困難の自覚は陰性群と差はなかった。運動誘発喘息が重症であるほど呼吸困難感を強く自覚していた。以上より呼吸困難の有無を問うことで軽症の運動誘発喘息を判定することは困難である。
福岡大学スポーツ科学部との共同研究
例年行っている喘息児対象のトレーニング以外に、拘束性呼吸障害を合併した喘息児のトレーニング療法に取り組んだ。日常生活活動に支障のない生活を送るためには目標運動耐用能(LT強度、約90% SpO2 強度)6Metsを目標とし、LT強度付近の運動強度を維持できるように負荷を与えていくという科学的運動療法を行った。そのためには断続運動(インターバル)、酸素吸入など工夫する必要がある。
高張食塩水による誘発喀痰・呼気濃縮液による気道炎症の評価
小児においても非侵襲的な気道炎症の評価として、従来からの呼気中NO濃度に加えて、高張食塩水による誘発喀痰と呼気濃縮液の採取を行っている。誘発喀痰中の好酸球と呼気中NO濃度は強い正の相関を示し、どちらも気道における好酸球性炎症のマーカーとして有用であると考えられた。また、呼気濃縮液のpHと呼気中NO濃度は有意な負の相関を示し、安静換気しか行えない乳幼児においても呼気濃縮液を用いることで気道炎症の評価ができる可能性が示された。
乳児におけるRSV感染とその後の反復性喘鳴の評価
乳児喘息の発症および誘因として気道ウイルス感染との関連を検討している。2歳未満の乳児喘息入院時にRSV迅速診断キットを用いて感染の有無を検査している。その後の喘鳴の持続や発症に関与した因子の解析を行うため、継続して症例数を重ねている。
小児における睡眠時無呼吸症候群
中野呼吸器科医長のご指導のもと、小児での睡眠時無呼吸症候群の検査および相談を行っている。閉塞性無呼吸症候群の小児では、福岡市立こども病院耳鼻科とも連携し扁桃摘出の適応を総合的に判断している。肥満に合併することも多く、併せて評価を行っている。
喘息児サマーキャンプおよび運動療法のエゴグラムによる評価
喘息児対象の運動療法(水泳教室)および合宿療法(サマーキャンプ)での心理的効果をエゴグラムで評価している。今年度は開始前の自我状態は自己否定他者肯定が多かった。今後も継続して調査を行っていく。