心療内科ってなぁに? 第49回 “お薬なしで治してください” ②

“お薬なしで治してください”

「お薬なしで治してください」という言葉を聞いた場合、どうしたら良いと思いますか?
症状がとても軽い場合は「お薬はいらないですよ」と伝えていますが、患者さんのほとんどの場合、“お薬なしで治る(症状が改善する)”には難しい状態で来院されます。

ギプスが骨を補助しているのと同じように

外来では身体の例を用いて薬の大切さについて説明しています。「心療内科の症状を“薬なし”で治してください」ということは、「手(足)を骨折している状況で“ギプスなし”で治してくださいと言っているのと同じですよ」と説明しています。どうでしょうか?皆さんはどのように感じましたか?ギプスをしないで骨折は治るでしょうか?ギプスをしないと骨と骨はキチンとつながりませんよね。そのままほっておくと曲がってつながるかもしれません。ギプスで保護していないと、治りきっていないのに以前のように使ってしまい、また同じ個所を骨折してしまった・・・という事にもなりかねません。

“ギプス”を付けて生活するのは嫌ですよね。同じように“薬”を飲みながら生活するのは嫌な事です。けれども、“ギプス”が骨を補助していると同じように、“薬”による補助ブレーキは治療にとって必要なものです。ストレス関連疾患(症状)が良くなるためのキーワードは、「脳のブレーキ」でしたね。「脳の休みを増やす」「アクセルを減らす」「動き過ぎを減らす」も大切です。このためには 「補助ブレーキ」=“薬の手助け”が必要になります。

薬の手助けを上手にもらう

心療内科に来られる患者さんは、「脳」をよく使う癖がついています。このような癖があり「考える」ことが止まらないといった状態になっています。「好きの向こう側に症状がある」でしたね。患者さんが病院を受診しようと思った時は、精神症状や身体症状が強く出ていて、自分自身の癖を振り返って「足りない所」を増やしていくといった余裕はありません。このような時は“手助け”“補助”が必要になります。“薬”や、その他の“色々な手助け”が必要になります(「手助けを上手にもらえない」も心療内科の患者さんの特徴の一つです)。

心療内科で使う薬は、「(脳の)補助ブレーキですよ」と患者さんに伝えています。“薬の手助け”を上手にもらえるようになると、「脳のアクセル」と「脳のブレーキ」とのバランスが取れるようになり、少しずつ症状は改善していきます。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉