心療内科ってなぁに? 第50回 “薬”と“助けをもらう“

“薬”と“助けをもらう“

皆さんの中にも「薬を飲むのは嫌だな」と感じる方がいると思いますが、必用な状況になった際は「しょうがないなぁ~」と“薬”を飲むと思います。一方、患者さんの中には“薬”の使用そのものに対して(ものすごく)強く反発する方がいます。どうしてかな?経験が浅い時はその理由はわかりませんでしたが、外来で患者さんに対応している際にその理由がなんとなくわかってきました。理由には2つあると考えています。一つは“薬”に対しての理解が少ない事(未知なものに対する不安感)、二つ目は“助けをもらう“ことが苦手な事(他から手助けをもらう技術が不足している)です。

“薬”に対しての理解

一つ目に関して :
心療内科を受診する患者さんは、インターネットで色々調べて多くの情報を持っていますが、患者さんが持っている情報は治療する際に適切な情報ではない事が多いです。情報を求めすぎてまとまりがなくなっていたり、過度に強調されている情報を持っていたり、患者さんが欲しい情報(興味のある、引っ掛かりのある情報)に偏っていたりしています。“薬”に対しての理解が進み、どうして必要?どうしたら必要量が少なくなる?などについてわかるようになると、“薬”と上手に付き合えるようになってきます。そして上手に“薬”の手助けをもらえるようになってくると、その量は減っていきます。外来の患者さんの中には、「今は”お守り”として持っていますが、ほとんど頓服薬は飲んでいません」と話す方もいます。

“助けをもらう“ことが苦手

二つ目に関して :
「助けをもらう」ことが苦手な人ほど「薬を飲むことが嫌!」と強く感じるようです。心療内科を受診される方は、「一人で何でもやってしまう」「助けを求めることが苦手」「相談することが苦手」「人に助けを求めるよりも自分で行った方が楽(早い)」という思考パターン・行動パターンを持っています(傾向があります)。このように“頑張ろう”とする方は、周りにとっては「頼み事を引き受けてくれる、ありがたい人」になりますが、何事も過ぎると病気になってしまいます。「助ける」と「助けてもらう」のバランスが崩れて「なんでも自分でやる」「人に頼めない」になってしまうと、結果として「考える」ことが増え、症状が悪化してしまいます。このような方には、「今は薬・補助ブレーキの助けが必要な時ですよ」「薬の手助けもらいましょう」と繰り返し話しています。

「助けをもらう」ことそのものにも、「脳」にブレーキをかける“補助ブレーキ”効果があります。「助けをもらう」ことは、結果として「脳への負荷を減らす」ことになるからです。「自分で行った方が楽(早い)」は、一見「脳への負荷が減る」ように思うかもしれませんが、実際は逆で、「脳への負荷が増えて」しまいます。「薬の手助けをもらう」ことは、「他から助けをもらう」という技術を習得する第一歩になります。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉