心療内科ってなぁに? 第100回 病気と健康の話⑩ 3のルール(技術)

心療内科ってなぁに? 第100回 病気と健康の話⑩ 3のルール

 以前「不安を減らす」ための技術として、「考える」という行為を減らす技術や、「考える機会を増やさない」技術を紹介しましたが、これらの技術が上手になると、どうして「不安」が減るの?という質問を受けました。少し詳しく説明していきたいと思います。

 

 今回は、「3回同じことを考えたらやめる技術」「3日以上先の事は考えない技術」「3m以内の事だけを考える技術」についてです。外来では3のルール(技術)と呼んでいます。

 

 外来を受診される方は、「脳」が動き過ぎて休めない状態になっています。長い間、「脳」が休めていなかったため、脳神経系の細胞活動が過剰に活性化して、脳神経システムが過敏になっています(緊張しています)。例えると糸電話で糸がピーンと張っている状況でしたね。このような方は、あたかもアンテナを長く大きく張り巡らせているような感じで、外部からのちょっとした刺激(情報)に、とても敏感になっています。「いつの間にか考えている」「考えるという行為が止まらない」「神経が過敏になる」「情報を多く集めてしまう」「(得られた情報を基に)また考えてしまう」といった悪循環に陥っています。その結果、「脳が疲弊」して“もう考えることができない” “何もしたくない” “身体も動かない”といった症状も出てきます。

 

 皆さんが暮らしている今の社会では、デジタル信号を高スピードで処理できるスマートフォンやコンピューターが普及し、インターネットを介した情報が、私たちのまわりにあふれるようになりました。一昔前(20年前)は、情報をラジオやTVから“受け身”で得ていましたが、最近は、私たちが“主体”となって、こちらから情報を探索して得ることができるようになりました。この環境は、知りたいことをすぐに知ることができるといった良い面もありますが、「脳」を多く用い過ぎるという悪い面もあります。「皆さんの脳」はこの情報のやり取りを可能にするために、常にフル回転で活動しています。このような状態が続くと、その「脳を使う」という行為が当たり前のように休みなく繰り返され、「脳」を多く用い過ぎるという癖がついてしまいます。さらに「脳」を使い続けると、「考える」「気になる」ことが止まらなくなってしまうこともあります。「脳」を多く用い過ぎるという癖がついてしまうと、「脳」が動き過ぎて休めない状態になってしまいます。「脳」が休めないと、「脳」だけでなく「体全体」で“緊張感”や“疲労感”を感じるようになります。

 

 「脳」を使うという行為=アクセルも大切ですが、「脳」を休めるという行為=ブレーキも大切です。普段から「脳」を休める練習を行い、その技術を習得していくことは、「脳」だけでなく「全身」のリラックス・健康を維持するために大切です。外来では、“3のルール(技術)”を練習していきましょう?と話しています。“意識の範囲=アンテナを3m以内に縮めてみましょう” “3日先の事は一旦考えることを止めてみましょう” “3回考えても答えが出ない事については考えることを止めましょう”と伝えています。

 

 日常で出来る、少しずつの練習が、症状の軽減につながっていきます。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉