心療内科ってなぁに? 第101回 心と体の関係⑬ “やりたいこと”を優先し過ぎると病気になりますよ!

心療内科ってなぁに? 第101回 心と体の関係⑬ “やりたいこと”を優先し過ぎると病気になりますよ!

心は“体の運転手”。第3週は“体の扱い方” “運転技術”について書いています。心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得、についての話です。

 

「“やりたいこと”を優先し過ぎると不健康になりますよ!」、このように患者さんに伝えると「えっ?」との反応が返ってきます。「“やりたいこと”を行うと、楽しいじゃないですか!」「“やりたいこと”をやればやるほど、“幸せ”になるのでは?」このような答えが返ってきます。「“やりたいことを”やり過ぎて、今、症状がでてしんどい思いをしていますよね」「そうですね・・・」外来に来られる患者さんの半分くらいでしょうか、治療の経過の中で、このような話のやりとりを行います。

 

 私も経験したことがあります。昔は“やりたいこと”を行っていれば“健康になれる” “もしかしたら幸せにもなれるかも”と思っていました。そして、「脳」や「身体」をフルに使って、休みをあまりとらずに“やりたいこと”を行っていました。年を取ると「脳」と「身体」の機能が衰えてきます。「脳や身体の機能」と「やりたいこと」にギャップ(隔たり)が大きくなると、倦怠感や意欲の低下など色々な症状が出てきます。症状が出て初めて“やりたいことを行っても健康にはなれない” “健康でないと(症状があると)楽しくない(幸せを感じられない)”という事に気が付きます。

 “やりたいこと”と病気の関係について、わかり易いように車で例えてみましょう。“東京に行きたい” “名古屋に行きたい” “仙台に行きたい” “大阪に行きたい” “福岡に行きたい”とやりたいことが多くあり、1週間で全ての場所に行こうとすると「車」はどのようになりますか?「車の運転手」が“やりたい”と思ったことをすべて行うと、「車=車体+エンジン(コンピューター)」は故障してしまうかもしれませんし、エネルギー=ガソリンがなくなってしまうかもしれません。少し無理がある行程でも新車であれば「車体」や「エンジン」は大丈夫かもしれませんが、中古車ではどうでしょうか?“どこかでガタガタという音が鳴っている” “変なエンジン音が聞こえる”このような時に、無理して運転を続けるとどうなるでしょう?“カタカタ”という音は、どこかのねじが緩んでいるために生じているかもしれません。“変なエンジン音”はオーバーヒートの前触れかもしれません。車が故障する前には、色々な症状が出てきます。

 

無理をしない“安全運転”が大切ですね。車を使った「ドライビング」は、無理なく行うと“楽しい”ものになり故障や事故も少なくなります。体を使った「ドライビング」も、無理なく行うと“楽しい”ものになり病気(症状)やけがは少なくなります。

皆さんは「人生=ドライビング」で“健康運転”していますか?「体=脳+身体」の状態を無視して、“やりたいこと”を優先し過ぎてはいませんか?“やりたいこと”が全部できなくても、体の調子が良く“健康”であれば、その日一日一日を“楽しく”感じることができます。最近はこのように感じています。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉