“心”は“体の運転手”。 メンテナンス技術と運転技術(ドライビング技術)、これらの技術を身に着けていくことが、「心Coro Heartの成長=行動の成長」につながります。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し、健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。
今回は「ストレス」についての話です。
1936年、ハンス・セリエ博士は「種々の有害物質で生じる1症候群」という論文で、精神的または肉体的であるかに関係なく、人は強い刺激に直面すると、型どおりで非特異的な反応が体内で生じることを示しました。この反応は汎適応症候群と呼ばれ、胸腺の萎縮、副腎肥大などの変化が生じることが示されました。
セリエ博士は、この「体の非特異的な反応」を「ストレス反応」という言葉で紹介しました。この「ストレス」という言葉は一般の人々にまで広がりましたが、その意味は博士が意図したものとは異なった意味で理解されてしまいました。
セリエ博士は、強い刺激に対する緊張反応を「ストレス反応」と呼び、「原因」と「反応」とを区別したかったのですが、「ストレス」という言葉は両方の意味を含んだ言葉として広まりました。このことを指摘されたセリエ博士は、「ストレス反応」を生じる「原因」を「ストレッサー」と定義して、博士の意図した内容で「ストレス(反応)」という言葉を認知してもらおうと試みましたが、「ストレス」という言葉は、すでに多くの異なる国や言語で一般的に受け入れられていたため、この試みは浸透しませんでした。
「ストレス」という言葉は現在の医学研究でも使用されていますが、ある論文では「反応」のことを「ストレス」と示したり、別の論文では「原因」について「ストレス」と記載されたり“あいまい”に用いられています。加えて、「ストレス」という言葉は、一般と同じように、心理社会的、精神的な内容に関わることに対して多く用いられているため、いまだに、セリエ博士が意図した「被験者が精神的または肉体的であるかに関係なく」という内容とは違って用いられています。このように、医学会の中でも「ストレス」という言葉を使う際には、混乱が生じています。
このような経緯で、今でも “心理社会的ストレス刺激と関連する症状”を「ストレス」と表現し、この言葉は複数の意味を含みながら使われています。このブログでは「ストレス」についての理解をより深めるために、「ストレス(刺激)」「ストレス(反応)」という言葉を使って説明しています。
私たちの体(脳と身体)は、外界からの「ストレス(刺激)」を感じて、その刺激に対応するために「反応」しています。特に大きな「非特異的な反応」が「ストレス(反応)」になります。
「ストレス」ってなぁに?
「ストレス」には、「ストレス(刺激)」と「ストレス(反応)」が含まれています。
「ストレス(刺激)」には、“心理社会的な問題にかかわる刺激”だけでなく、“細菌” “ウイルス” “温度変化” “気圧変化”などの、“生物にかかわる刺激”や“物理にかかわる刺激”もあります。
これらの刺激に対する体(脳と身体)の反応のうち、特に大きな反応を「ストレス(反応)」と呼んでいます。
治療に関連して少し踏み込んで話をすると、“症状”を軽減するためには、“心理社会的な問題にかかわる刺激” “生物にかかわる刺激” “物理にかかわる刺激”を区別して対応する必要があります。どうしてかというと、同じ「ストレス(反応)」=症状を示していても、「原因」「ストレス(刺激)」が異なると、治療法が変わってくるからです。
“咳”という症状を訴えている患者さんの例で話をすると、細菌やウイルスなど“生物にかかわる刺激”が「原因」なのに、適切な対応をせず別の治療を行っていると症状は改善しません。人間関係の悩みや職場での不適応など“心理社会的な問題にかかわる刺激”が「原因」なのに、適切な対応をせず別の治療を行っていると症状は改善しません。「原因」に対して適切な治療を行っていくと、症状は軽減していきます。
セリエ博士が「ストレッサー」という言葉を作って「ストレス(刺激)」を強調したかったのもわかる気がします。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
