2020年11月度 今月の特集「COPD」

はじめに

毎年11月の第3水曜日は「世界COPDデー」と定められており、2020年は11月18日です。COPDという病気への関心を高めるために、日本でも2002年から毎年、講演会などのイベントが開催されていますが、まだまだ広く知られていないのが実情です。

そこで、今月の特集では、肺の生活習慣病とも称され、多くの方がすでに罹っているにもかかわらず、見過ごされがちな「COPD」という病気を取り上げたいと思います。

病名のこと

COPD(シー・オー・ピー・ディー)は、日本語では「慢性閉塞性肺疾患」という病名ですが、長くて覚えにくいので英語の病名(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の頭文字を並べたCOPDという病名が良く使われます。

かつて「肺気腫」あるいは「慢性気管支炎」と言われていた病気の総称ですが、今でも古い病名の方が浸透しているかも知れません。

どんな病気か

原因の大半は、喫煙です。タバコを吸い続けると煙に含まれる有害物質の影響で、空気の通り道(気管支)が狭くなったり、肺の組織(肺胞)が壊れたりして、呼吸が苦しくなる病気です。過去に喫煙習慣があれば、禁煙後でもCOPDになる可能性があります。

症状のこと

COPDで現れやすい症状は、咳、痰、息切れの3つです。これらの症状は、だれでも経験することの多い症状でCOPDに特有の症状ではありませんが、ちょっとしたポイントに気を付けることで、COPDを見つける重要な手掛かりになります。

まず、咳と痰のポイントを説明いたします。風邪をひいたときにもよく見られる症状ですが、熱やのどの痛みがないのに、いつも咳や痰が出る場合は要注意です。また、風邪をひいたあとに、咳や痰だけが長引くときも、COPDが隠れている可能性があります。

次に、息切れのポイントです。健康な人でも走ったりすると息切れを感じますが、COPDでは軽い動作でも息苦しさを感じやすくなります。

以前よりも少ない動きで息が切れるようになった場合、加齢が原因のこともありますが、身近にいる同年代の人が平気なのに、一人だけ息を切らしていたら要注意です。病気の早期では階段や上り坂で症状が出始めることが多いので、そういう時に周りの人と比べてみるのも、早期発見には良い方法です。

検査のこと

COPDが疑われたら、呼吸機能検査で診断します。息を最大限に吸い込んでから、思い切り強く吐き出した時の息の量を測定して、空気の流れを判定します。

治療のこと

一番重要な治療は禁煙です。病気の進行を止める最も有効な方法です。

薬物療法では、気管支を広げる吸入薬(気管支拡張薬)が多くの患者さんに処方されています。2種類の薬剤が一つの吸入器に収められている配合薬もあります。薬物療法と併せて、呼吸リハビリテーションや、必要に応じて在宅酸素療法が行われる場合もあります。

早期に治療を開始することで、病気の進行を緩やかにすることができるので、症状が軽い早期のうちにCOPDを発見することが、とても重要です。

COPDに罹っている可能性がないか確かめてみましょう

次のページの、スクリーニングのための質問票(COOPD-Q)で合計点が4点以上あれば、COPDにかかっている可能性があるので、呼吸機能検査ができる医療機関(福岡病院でも実施できます)の受診をお勧めいたします。

国立病院機構 福岡病院 院長 𠮷田 誠