心療内科ってなぁに? 第8回 どうして「心療内科」で“うつ”や“不安”を診ているの?

どうして「心療内科」で“うつ”や“不安”を診ているの?

「心療内科」は、「精神科」とよく間違われます。

制度上の問題もありますが、実際に、「心療内科」でも抑うつ症状や不安症状の治療も行っています。どうしてでしょうか?

「心療内科」では“ストレス”から生じる身体の症状を診ています。それ故、「心療内科」でも抑うつ症状と不安症状を診ています。

詳しく説明すると・・・

  • “ストレス”とは、「ストレッサー(ストレス刺激)」+「ストレス反応(生体反応)」です。
  • “ストレス”は、「脳」で処理されています。
  • “ストレス”が、強すぎたり長く続いたりすると、「脳の異常」が生じます。
  • 「脳」は「神経」とつながっています。そして「神経」は、身体の色々な臓器、器官(内臓)とつながっています。

「脳」は「神経」を介して「色々な臓器・器官」とつながっているので、強い“ストレス”によって生じた「脳の異常」は、動悸・息切れ・咳・食欲不振・ムカムカ・下痢・めまい・肩こり・筋肉痛など、色々な症状を引き起こします。これらが、「脳の異常」から生じた身体の症状です。

もちろん、「脳の異常」からは、“抑うつ症状”や“不安症状”などの精神の症状も引き起こされます。

つまり、「脳の異常」があると、精神症状(脳の症状)身体症状(身体(内臓・筋肉)の症状)が生じます。

精神科と心療内科
  • 「精神科」が診ている = 精神症状
  • 「心療内科」が診ている = 身体症状

「脳の異常」からは、主に「脳の症状」=精神症状が引き起こされます。

「脳の異常」から身体症状も引き起こされるのですが、このことはあまり知られていません。

ですから皆さんの中では、「脳の異常」と精神症状が強く結びついていると思います。

気が付きにくいかもしれませんが、“強いストレス”から生じた「脳の異常」は、精神症状身体症状の両方が同時に引き起こされます。

あまり知られていないかもしれませんが、「うつ病」の診断基準の中には食欲不振の項目があります。これは身体症状です。

  • 精神症状が中心の場合は、「精神科」の領域になります。
  • 身体症状が中心の場合は、「心療内科」の領域になります。

まれに、“強いストレス”から生じた「脳の異常」があるけど、精神症状は示さず、身体症状だけを示している患者さんがいます。

「脳の異常」から生じた身体症状では検査異常が出ない(出にくい)ので、強い症状を訴えているのに「何処に原因がある?」とわからないことがあります。

このような患者さんは「心療内科」の対象となります。

どうして「心療内科」で“うつ”や“不安”を診ているのか、なんとなくわかってきましたか?

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉