心療内科ってなぁに? 第28回 治療に関するお話⑥ “治療のポイント”

治療に関するお話⑥ “治療のポイント”

ストレスが関係する病気(症状)の治療のキーワードは、「脳のブレーキを増やす」「脳の休みを増やす」ことになります。また「アクセルを減らす」「動き過ぎを減らす」ことも大切です。

脳を休める

治療の中で大切なポイントは、「脳を休める」ことができているかどうかです。具体的には、どれだけ「睡眠がとれているか」になります。睡眠時、「脳」は通常機能をシャットダウンして自己回復モード・充電モードに切り替わります。多くの仕事や悩み事があり、たくさん「脳」を使った日は寝つきが悪くなります。これは寝る前になっても「脳」が興奮しているからです。

お昼寝も有効ですが、よく患者さんは「お昼も横になって休んでいるのに全然良くなりません」と話されます。このような方は「身体は休める」ことはできていますが「脳を休める」ことができていません。

横になっていても「私は何もできていない」「私は役に立っていない」「どんどんぐうたらになってしまう」など「脳」の中で葛藤し、考えてしまい、「脳を休める」ことができていないようです。症状がなかなかよくならない人は、「脳が休めている」かどうか、ご自身の脳に「しっかり休めている?」「何か考えていない?」と問いかけて聞いてみて下さい。

心療内科で使う薬は「(脳の)補助ブレーキですよ」と患者さんに伝えています。抗うつ薬、抗不安薬(安定剤)、睡眠導入薬、これらのお薬は全て「脳」や「神経」にブレーキをかけるお薬です。ブレーキをかけることで「脳」に「休み」を促します。治療にはこれらのお薬の“手助け”が必要です。

休む時間をつくる

その他のポイントとして「~しながら」では「休めない」ことも伝えています。例えばスマホは「使いながら充電する」ことは推奨されていませんね。電池の劣化が早くなりますし、充電の効率も落ちてきます。自転車、車、他の道具も同じです。充電の際にはシャットダウンしてお休みすることが大切です。

「体=脳+身体」も同じで、「休む」時にはしっかり休む、「動く=使う」時には意識して動く(使う)ことを勧めています。難しい時には、時間を区切って(あらかじめ休む時間を設定して)日常生活を送るようにとアドバイスしています。

疲れていても疲れていなくても“〇〇時から〇〇時までは休む時間、一人でボーっとする時間”と決めて、「休み」を取ってみましょうと伝えています。

休むことに慣れていない人の中には「休む」という事そのものがわからないという患者さんもいます。このような患者さんには“まずは「休む」という言葉を〇〇さんの中の辞書に書いてください”とアドバイスしています。「休む」という言葉そのものを意識してもらうところから始めることが必要な人もいます。

眠れるようになって、「脳が休む」=「脳にエネルギーを蓄える(充電)」ことができるようになれば、“ストレス”関連の症状は、少しずつ良くなっていきます。(急にはよくなりませんよ!と伝えています)

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉