心療内科ってなぁに? 第33回 治療に関するお話⑩ “脳のアクセル・脳のブレーキ”

治療に関するお話⑩ “脳のアクセル・脳のブレーキ”

これまで“心療内科の病気(症状)がどのようにして生じるのか、悪化するのか”について話してきました。少し難しかったでしょうか?

”心療内科の病気(症状)がどのように治るのか”については、新たな話はありません。悪くなるほうの逆を考えれば良いだけです。

病気の成り立ちについて知ることができれば、意図的に症状を良くすることも・悪くすることもできるようになります。
(“自分の症状を増やそう!”という人は基本的にはいませんが、少し特殊な病気で行動に異常がでる方の中に“自分の症状を増やそう!”という患者さんはいます。)

脳のアクセル

心療内科の病気(症状)が悪化するキーワードは「脳のアクセル」です。

  • 「好きの向こう側」に「病気=症状」があります。
  • 「考えることが好き」⇒「脳を使い過ぎる」⇒「脳や神経に負担が生じる」という流れがあります。

「脳のアクセル」が強い人、「脳のブレーキ」が弱い人、そして過度にバランスが崩れている人が、心療内科の病気(症状)になりやすいです。

通常、皆さんは他の人との「脳の使い方」を比べたことがないので、個人個人のやり方、独自の方法で「脳」を使っています。長年我流で使っていると「私の使い方があたりまえ」という癖がついてしまいます。「脳」を多く使う癖がついている人は、いつの間にか「脳」を酷使するようになります。数十年間この方法で「脳」を使っていると、「脳の使い過ぎ」によって「脳に異常」が生じます。これが、心療内科の病気(症状)の源です。

「脳の使い過ぎ」の結果、脳や神経で“疲労”と“緊張(過敏)”に関連する症状が生じます。これらが心療内科の病気の精神症状や身体症状になります(ストレスと脳・神経系との関係について、科学的なデータ・証明は増えてきています)。

バランスが大切

自転車でも車でも“アクセル”と“ブレーキ”の「バランス」が大切です。この「バランス」が崩れたときに、故障や病気(症状)が生じます。脳や身体も同じです。

心療内科の病気は、どのようにしたら治りますか?

外来でよく聞くこの質問に対して、外来では「バランスがとれるようになれば治っていきますよ」と答えています。加えて、「悪くしようとすれば悪くすることができるようになります、良くしようとすれば良くなることもできます」とも伝えています。

心療内科の病気(症状)では「脳の使い過ぎ」が原因で脳・神経系のバランスが崩れています。この状態を改善するためのキーワードは「脳のブレーキ」になります。

心療内科で使う薬は、「(脳の)補助ブレーキですよ」と患者さんに伝えています。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉