治療に関するお話⑨ “お薬のつぶやき2”
抗うつ薬や抗不安薬には、悪いイメージがあるようです。
けれども、抗うつ薬や抗不安薬は、本当に悪い物なのでしょうか?
- 「僕たちの役割は決まっています。そのように作られました」
- 「症状を悪くしようなんて思っていません!役割以上のことはできません!」
- 「私たちは、皆さんの手助けがしたいだけなのに・・・(涙)」
- 「そんなふうに偏見の目で見ないでよ!」
という“お薬のつぶやき”が聞こえてくる気がします。
お薬は、単なる薬です。“抗うつ薬”や“抗不安薬”、どのような名前がついても、薬は薬です。薬そのものに「飲んだ人を悪くしてやろう!」という意志は、もちろんありません。
薬の作用は、薬それぞれで決まっています。少し難しいかもしれませんが、薬は特定の受容体(レセプター)にだけくっつき、作用することができます。逆に言うと、薬はそれ以外の受容体にはくっつくことができず、作用することができません。鍵穴と鍵の関係のように、それぞれの薬の特徴にあった鍵穴を見つけるとそこに入って作用します。違う形の鍵穴には入る(くっつく)ことができないので目的以外に作用することができません。それぞれの役割を果たすことしかできないのです。
例えば、
- Caブロッカーという鍵をもった薬は、血管に作用して、血圧を下げる作用があります。
- PPIという鍵をもった薬は、胃に作用して、胃酸の分泌をおさえます。
- ベンゾジアゼピンという鍵をもった薬は、神経に作用して神経系にブレーキをかけます。
それぞれの薬は、それぞれの作用しか行うことはできません。
それなのに、目的の作用しかできないのに、
- 「“抗うつ薬だから嫌い!”“抗不安薬だから嫌い!”と言わないで」
- 「変な目で見ないで、変なレッテルをはらないで」
- 「血圧をさげるお薬や、胃酸を抑えるお薬と、差別しないで」
- 「僕たち、私たちも頑張っているのだから、認めてほしいな」
そんな“お薬のつぶやき”が聞こえてきます。
お薬そのものに「悪くしてやろう!」という意志はないので、“抗うつ薬”や“抗不安薬”だからといって嫌な顔をしないでほしいな、と思います。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉