心療内科ってなぁに? 第59回 ”脳”にも限界がある③

最近は、若い人も「長引く咳」「長引く息切れ」を訴えて来院されるようになりました。

近くの医院やクリニックで検査しても原因がわからない人が精査目的で当院に紹介されて来院します。若い人の場合は“身体”に異常があることは少なく、呼吸器科の先生が再度検査をしても明らかな原因が出てこないことが多いです。このような症例では、他科疾患の可能性を探していくのですが、当院では耳鼻科や心療内科もあるので、これらの科への受診を勧め、連携しながら診療しています。

知らず知らずに“脳”を使っていると

このような病状の患者さんを通して、若い人でも「“脳”が疲れる」のだなぁと感じています。

インターネット社会では、“身体”を使うよりも“脳”を使うことが多くなっています。パソコンを使って仕事をすると、“身体”を使った“手書き”の仕事より、数倍早く仕事が片付きます。“仕事の効率”という視点からみると“良いこと”として認識されると思いますが、“体の視点”や“健康の視点”といった別の視点からみると違ったものになります。“手書き”の仕事よりも数倍“脳”を使っているため、病気や症状がでるリスクが高まります。

仕事だけではありません。家に帰ってもインターネットで知りたい情報を検索したりします。“スポーツの情報” “ゲームの情報” “海外の情報” “健康の情報”など、デジタル情報にあふれています。デジタル情報には際限がないので調べるときりがありません。家に帰っても知らず知らずに“脳”を多く使っています。

“脳”が疲れると、自律神経を介して身体にもいろいろな症状が生じます。

呼吸器、アレルギーの専門病院にいると、「咳症状」や「息切れ症状」を訴える患者さんに出会います。色々検査してもはっきりとした原因が出てこない、指で測る酸素の量が98-100%で身体を巡っている酸素の量は十分にあるのに常に「息切れ」「息苦しい」と感じる、このような患者さんは“呼吸器”が原因で生じる症状ではなく“脳”が原因で生じる症状と考えています。「原因」があって「結果」があります。その「長引く咳」「長引く息切れ」にも原因があります。「身体(呼吸器関連の器官)」が原因の場合もありますし、「脳(ストレス)」が原因の場合もあります。「身体」と「脳(ストレス)」両方が関与している場合もあります。

“脳”と“身体”のバランス

私たちは“脳”と“身体”をバランスよく使うことで“健康”を保っています。

車も同じで、「エンジン(コンピューター)」と「車体」をバランスよく使う事で“車の健康”を保っています。車では、「エンジン」ばかり回して“空ぶかし”しているとオーバーヒートしてしまいますよね。私たちも“脳”ばかり使っていると、若い体(新車)でも壊れることがあります。

皆さんは、“脳”と“身体”をバランスよく使っていますか?“脳”ばかり使っていませんか?「車の運転手」が車の調子をチェックするように、「体の運転手」である「心」で、自らの体調=体(脳+身体)の調子をチェックしてみてください。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉