心療内科ってなぁに? 第69回 私は認知症?③

私は認知症?③

コンピューターやスマホでは、「情報を処理する速度」や「データを保存できる容量」などの機能はそれぞれ決まっています(限界があります)。同じように、「脳」でもこれらの機能はある程度決まっています(限界があります)。そして、年齢によってこれらの機能(限界)は変動していきます。

 

子供から大人になるにつれ「脳」の機能は増加していきます。一方、高齢になると、年を取るにつれ「脳」の機能はゆっくりと低下していきます。嫌な言葉に聞こえるかもしれませんが「脳」は物(物質)なので“老化=劣化”していきます。“老化=劣化”・・・なかなか受け入れにくい言葉ですが、“健康になりたい!”と願っている私たちにとって、避けて通れない大切な言葉です。今回のブログでは、この「脳」の問題とどのように付き合っていったらよいか、考えてみたいと思います。

 

「脳の空き容量」が少なくなっている?

コンピューターやスマホでは、機能(能力)以上の情報が入ってくると、フリーズ(固まる)やシャットダウンができない、といったトラブルが生じます。「残っている容量(空き容量)」が少ないと、新たなアプリを入れようとしてもダウンロードできません。「脳」でも能力以上の情報が(急に)入ってくると、“フリーズ(固まる)=考えが止まる(思考停止)”や“シャットダウンができない = 睡眠障害”といったトラブルが生じます。「脳の空き容量」が少ないときは、新たな事をがんばって“記憶”しようとしても上手くできません。“昔は覚えることができたのにどうして今はできないの?” “若い頃はテレビに出てくる人の名前をいう事が出来たのに今はどうしてできないの?”患者さんこのように話されます。“昔はもっとできた” “若い時はできたのに・・・”、過去の良い時の状態と比べても勝ち目はありません。若い時の「脳」とは機能が違うからです。

 

「脳の空き容量」を増やす方法

さて、“記憶力が落ちた”と感じたときには、どのように対応したらよいでしょうか?

 

スマホの動きが悪くなった時は、アプリや情報をゴミ箱に捨て中身を軽くします。スマホの中にため込んでいた情報を捨てる(外に出す)と、「空き容量」が増えて新たなアプリをダウンロードできるようになります。「脳」も同じです。いっぱい詰まった「脳」から情報を捨て、「脳の空き容量」が増えると、新たな情報を“記憶”することができるようになります。

 

 「脳」の中の情報を捨てる、言うは簡単ですが行うは難しいようです。外来では“記憶しない”練習を勧めています。今の世の中は、デジタル情報であふれていて「脳を使う」ことが多くなっています。このような状況で生活しているので、皆さんも「脳を使わない」“記憶しないでメモを取る技術”を増やしてみてはいかがでしょうか?もしかすると「脳」が軽くなった感じがするかもしれません。“記憶力が少し戻った”と感じるようになるかもしれません。“「脳」の中の情報を捨てる技術”については他の方法もあると思います。良い方法があったら教えてくださいね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉