心療内科ってなぁに? 第70回 私は認知症?④

私は認知症?④

 “「脳」に症状が出始めたな”と感じたときは、どのように対応したらよいでしょうか?コンピューターやスマホでトラブルが生じたとき、皆さんはどうしますか?コンピューターやスマホでのトラブル、例えば、“シャットダウンができない” “熱がこもった” “電池が少なくなった”ときはどうしますか?“スイッチをOffしてスマホを休める” “充電器につなげる”、時には、“停止ボタンを長押しして強制シャットダウン”したり、自分で対応できないときは“修理をお願いする”と思います。

 

 “「脳」でシャットダウンができない” = “睡眠ができない”ときはどうしたらよいでしょうか?外来診療では「睡眠薬の手助け」を用いて“シャットダウン(睡眠)”を誘導します。外来では、強制シャットダウンほどの強い薬は使いません。あくまで「補助ブレーキ」レベルの薬でシャットダウンを促します。医療現場でも強制シャットダウンをさせる薬はあります。手術で用いる麻酔薬が“強制シャットダウン薬”になります。

 

「脳」でも“熱がこもる”ことがあります。多く「脳」を使った =「考えた」ときに“頭が熱くなった”という経験はありませんか?このような場合では、ぬれタオルをのせて頭を冷やすと心地よいです。また、手をひたいに当てると頭の熱が手に吸収される(移動する)のでスッキリします。

 

「脳」でも電池切れ(疲れて動かなくなる)があります。この際は「脳」の使用を中止して、充電する必要があります。直接的に「脳」にエネルギーを充電する方法はないので、行うことは一つです。「考える」ことを止める、「眠る」=スイッチをOffして「脳を休ませる」ことが大切になります。

 

「脳」の健康のために

4回にわたって「認知症」の症状の一つである“記憶力の低下”について書いてきました。“記憶力の低下”とどのように付き合っていけばよいか?皆さんの答えはでましたか?

現代のデジタル情報社会では、インターネットやTV番組から情報を集めて「脳」に詰め込む“くせ”がついています。「私は認知症ですよね」「認知症が心配です」と話している人の中に、“昨日のTV番組で話されていたことと、私の今の状態が同じです・・・心配です”と話される方がいます。心配して、さらにインターネットで色々調べて、余計に不安になって悩んでしまい、悪循環に陥っている患者さんがいます。

 

「私は認知症?」と悩むことができている間は、多分、認知症ではないので安心ください。あくまでも、多分・・・、なので心配な人はきちんと検査を受けて下さいね。“心配”は「考え過ぎ」から生じるので、まずは「考える」ことを減らしてみて下さい。年を取っていくとだれでも「脳の機能低下」がでてくるので、“記憶力の低下”を自覚したときは、すべてを覚えようとせず、大切なことはメモに書いて残すようにしてくださいね。また、“皆も記憶が低下しているはず!” “私だけではない” “まあいいか!”と切り替えることができるようになると(これも技術の一つです)、“過剰な不安”が減って、明るく・前向きに過ごせるようになると思います。

 

「脳」の健康のためには、「脳を使う(アクセル)」と「脳を使わない(ブレーキ)」、このバランスが大切です。限界を知って「脳」を大切に使う、この技術が身に付いていけば「脳」のトラブルが少なくなってくると思います。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉