心療内科ってなぁに? 第76回 病気と健康の話②“うつ病”って何?2

病気と健康の話②“うつ病”って何?2

 患者さんには、“うつ病”=“「脳」が疲弊している状態” “「脳」が疲れ切っている状態”と説明しています。「脳の疲労」、この言葉については、科学的に理論的に示すことができていないので、学会やカンファレンスの中では使えない言葉です。専門家がこの言葉を使うと叱られてしまいます。今の科学の力をもってしても「脳の疲労」を検査データで示すことは難しく、世界中の科学者が研究しています。

 

 科学的な表現ではないのですが、患者さんが理解しやすいため、外来では「脳の疲労」という言葉を使っています。「脳の疲労」があると仮説を立てて、「脳を休める」ということを目的に治療を行うと“ストレス関連の症状”は改善していきます。検査データでは示すことはできていませんが、原因(仮説)と結論(改善)がつながっているので、このように説明しています。

 

 先月のブログの中で、“うつ病”症状について、「脳の使い過ぎ」「脳マラソン」を意識しながら考えてみましょう!と書きましたが、皆さんの答えは出ましたか?まだの人は、スマートフォン(スマホ)の例を用いて、一緒に「脳の異常」について考えてみましょう。

 

 スマホでの経験を思い出してみましょう。“スマホで動画を見ている時に動画が止まった” “スポーツで盛り上がっている得点のシーンで画面が動かない!一番いい所を見逃がしてしまった”、その他“たくさん写真をとってスマホに残していたら容量がなくなってしまった” “容量がなくなって新しいアプリをダウンロードできなくなった” “ゲームをしていたら反応が遅くなった” “反応が遅いので色々触っていたら画面が止まってしまって画面が真っ黒になってしまった” “長時間スマホを使っていたら熱がこもって熱くなっていた” “スマホが古くなって電池の持ちがわるくなった”このような事を経験したことはありませんか?

 

 「脳」の症状も、スマホの症状とよく似ています。

 

 「脳」を長時間・連続して使って疲弊してしまうと、「脳」の動きが遅くなります(思考力の減退)。情報を処理しようとしても動きが重たくなり(判断力の減退)、新たな情報を入れるとさらに動きが悪くなります(思考力の減退)。急にシャットダウンしたり(急に眠たくなってしまう)、逆に、画面が固まって通常のシャットダウンができなかったり(寝つきが悪くなる)することもあります。そのほか、電池がなくなってしまう(エネルギーがすぐに切れる、集中力の減退)や、熱がこもってしまう(頭に熱がこもってしまう)などの症状もでてきます。

 

 どうですか?「脳」が疲れてしてしまうと、人では“意欲や喜びの減退” “頭痛や筋肉の痛み” “食欲の減退”などの症状も加わります。「身体」がとても疲れると、意欲が減って“何もしたくな~い!”ってなりますよね。同じような感じです。

 

 「脳」の症状は、スマホの症状とよく似ています。

 「脳」の症状の治り方も、スマホとよく似ています。

 

 “うつ病って何?”についての理解が深まりましたか?

 次は、“どうしたらうつ病がよくなる?”について考えてみて下さい。“どうしたらスマホの調子がよくなる?”と比べながら、皆さん自身の答えをだしてみて下さいね。ただし、“スマホと違って「脳」は部品を取り換えるということはできません”。

 

 

 

うこんの花をもらいました。きれいですね。

春と秋で花の色が違うそうです。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉