心療内科ってなぁに? 第77回 心と体の関係⑤ 脳のオーバーヒート

心と体の関係⑤ 脳のオーバーヒート

 心は“体の運転手”。第3週は“体の扱い方” “運転技術”について書いています。心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得、についての話です。

 

 今回は“脳のオーバーヒート”の話です。

 

 車のトラブルに関連して注意が必要なのが“エンジンのオーバーヒート”です。車のエンジンはガソリンと空気が燃焼して生じたエネルギーによって動力を得ています。何も対策していないと高温になり過ぎて壊れてしまうので、冷却水という水で冷やされながらエンジンは動いています。発生する熱量が冷却する水の力よりも大きくなり過ぎると、エンジンのトラブルであるオーバーヒートが生じます。車にはオーバーヒートを感知できる水温計というものが付いていて、正常であれば、水温計は「C(Cool:冷たい)」と「H(Hot:熱い)」の真ん中のあたりを指します。“オーバーヒートの兆し = 冷却水の温度の上昇”を認めた場合、水温計は「H(熱い)」を示します。もし、このサインに気付かないまま車を走らせていると、エンジンの回転が不安定になり、異音・異臭といった症状が出てきます。さらに状態が悪化すると、ボンネットから煙が出てエンジンはストップしてしまいます。安全運転に関わる問題なので、運転手は“オーバーヒート”について知っておく必要があり、免許証を取るときに講習会で習います。

 

  “脳のオーバーヒート”も“エンジンのオーバーヒート”と同じような状態になります。過剰に「脳」を使うと、エンジンと同じように「脳」も熱くなってきます。血液やリンパ液によって「脳」は冷却されていますが、使う事によって発生する“熱の量”が“冷やす力”よりも大きくなると“脳のオーバーヒート”が生じます。皆さんも、「考え過ぎて」頭に熱がこもったことはありませんか?“脳のオーバーヒート”状態になると、「脳」の回転が不安定(思考が不安定)になります。エンジンとは違い異音・異臭といった症状はありませんが、痛み=頭痛といった症状が出てきます。さらに状態が悪化すると、「脳」から煙が出て機能はストップしてしまいます(実際には煙はあがっていない?のですが、もわっと熱がこもった感じになるようです)。

 

 “エンジンのオーバーヒート”の原因には、1)エンジンに大きな負荷がかかる運転、2)水漏れなどの冷却システムの不具合などがあります。“エンジンのオーバーヒート”のサインが出た場合は、エンジンを止めてエンジンを冷やす必要があります。冷却水が漏れていないかなど冷却システムが正常に動いているかについて確認する必要があります。

 

 “脳のオーバーヒート”の原因は、1)「脳」に大きな負荷がかかる使い方、でしたね。「脳」の使い過ぎ=たくさん考えた後は、“頭に熱がこもる” “頭が重い” “頭痛”などが生じます。このような症状が出た時には“考える”事をやめて「脳」を冷やす必要があります。「脳」を冷やす?どうしたらよいでしょうか?風邪をひいて熱が出た時と同じように、氷水で冷やしてもよいのですが“冷やし過ぎた”と感じることもあります。外来では“水で濡らしたタオルをのせてはどうですか?”とアドバイスしています。ぬれタオルは次第に温まってきますが、再び水に浸して絞り額にのせると復活します。ぬれタオル作戦、手軽で気持ちのよい方法です。他の方法としては手を額に当てる(当ててもらう)方法です。熱くなった頭より手の方が冷たく、手は熱を吸収してくれるので気持ちよく感じます。

 

 皆さんも、“オーバーヒート”に注意しながら「脳」を使ってくださいね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉