心療内科ってなぁに? 第79回 病気と健康の話③“どうしたらうつ病はよくなる?”

病気と健康の話③“どうしたらうつ病はよくなる?”

 「脳」の症状も、スマホの症状とよく似ています。「脳」を長時間・連続して使って疲弊してしまうと、「脳」の動きが遅くなります(思考力の減退)。情報を処理しようとしても動きが重たくなり(判断力の減退)、新たな情報を入れるとさらに動きが悪くなります(思考力の減退)。急にシャットダウンしたり(急に眠たくなってしまう)、逆に、画面が固まって通常のシャットダウンができなったり(寝つきが悪くなる)することもあります。そのほか、電池がなくなってしまう(エネルギーがすぐに切れる、集中力の減退)や、熱がこもってしまう(頭に熱がこもってしまう)などの症状もでてきます。これらの症状はどの様に対応したら改善するでしょうか?

 

 「脳」の症状の治り方も、スマホとよく似ています。動きが重たくなったり(判断力の減退)、新たな情報が入らなくなったり(記憶力の減退)の場合には、写真やアプリなど多くの情報がスマホ内に溜まっていることが原因です。スマホにこれらの情報を詰め込み過ぎると、情報の処理能力が遅くなり動きが悪くなります。この状態の解決方法は、情報を捨てることです。大切な写真だけを残して、他の写真は別の媒体に移してスマホ内から情報を抜き出します。最近使っていないいらないアプリは削除していきます。そうすると容量に空きができ、スマホは軽く動くようになります。「脳」も同じです。“覚えなくては”とむりに記憶しようとするのではなく、“覚えておきたいこと”をメモに残すようにすると「脳」が軽く感じられるようになります。新たな情報もメモに残すと良いでしょう。

 

 うつ病の治療で特に大切なことが、「脳」を休めることです。スマホは“疲れ”という症状はありませんが、この“疲れ”を改善させるには、「脳を休ませる」「脳を使わない」ことが大切になります。スマホで例えると、「電池を消耗しない」「充電する」になります。「脳」ではスマホみたいにすぐに充電できるわけではありません。スマホみたいにへたった電池を取り換えることもできません。「脳を休める」ことが大切になります。うつ病では「脳」がシャットダウンできなくなる睡眠障害の症状がでてきます。休みたいのに休めない、眠りたいのに眠れない。このような状態になります。このような時に、“寝ることを頑張る” “自分自身で何とかしよう”とすると悪循環にはまってしまいます。「脳を休める」「眠れる」ように、睡眠導入薬(安定剤)を使う事が大切な治療になってきます。これらのお薬の力を借りて、「脳を休める」ことができるようになると、うつ病の症状はゆっくりと改善していきます。ただし、休んで回復したぶんだけです。休んだ後に、再び多く「脳」を使ってしまうと、症状が出現したり悪くなったりすこともあるので注意しましょう。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉