心療内科ってなぁに? 第82回 病気と健康の話④“不安” ”緊張” ”過敏”

病気と健康の話④“不安” ”緊張” ”過敏”

 これまで“うつ病”について話してきましたが、今回は、精神障害(メンタルの病気)でよくみられるもう一つの病気“不安障害”について話したいと思います。“うつ病”は「脳の使い過ぎ」「脳マラソン」「脳のオーバーワーク」が原因で「脳」が疲れ切っている状態になると生じます。“不安障害”も同じ原因で生じます。“抑うつ症状” “不安症状”どちらが優位になるかは、病気の時期や体質によります。

 

 私たちが「脳の使い過ぎ」「脳マラソン」「脳のオーバーワーク」をしている際は、「脳」はとても“興奮”しています。別の表現で表すと「脳」や「神経」の細胞が非常に活性化している状態ともいえます。「脳」や「神経」が“興奮”しているときは、少しの刺激でも大きく反応してしまう“過敏”な状態にもなっています。この“神経の過敏性”については、以前、糸電話の例を用いて説明しましたね。糸電話では、糸の張りが強いと“声がよく響き”相手に声がよく伝わります(良く聞こえます)。「脳」や「神経」でも似たような感じになっていて、周りの小さな音も“よく聞こえる”ようになってしまいます。そのため、隣の部屋でスマホがブブブと震えている音にたいして、ビクッと過剰に反応してしまうことがあるそうです。

 

 周りの雰囲気が“緊張”している時にも“過敏性”は生じます。コンサートホールでは周りがシーンと静かになって、ピンと空気が張り詰めているように感じます。演奏者の“良い音を出そう”、観客の“良い音を聞こう”という意識によって“緊張した雰囲気”は生じます。テレビ越しでもこの緊張感は伝わってきます。この時にコホンと咳払いをするとどうなりますか?ものすごく響きますよね。私たちが「脳の使い過ぎ」「脳マラソン」「脳のオーバーワーク」をしている際は、このような“緊張” “過敏な状態”が「脳の中」で生じています。

 

 ストレスによって“脳の中が敏感”になっているときは、視覚や聴覚などに関する神経系も敏感になって、“光がまぶしい” “音に敏感”といった症状や、周りの“空気” “雰囲気”に対しても“人目が気になる”などの過敏な症状が生じます。このような状態では、さらに色々「考えて」しまい(反復思考)、この「考えること」がさらなる“不安”を引き起こし、さらに「考えて」しまう悪循環に陥ってしまいます。

 

 このように、“不安” “緊張” “過敏”はお互いに関係しています。“緊張”すると周りに“過敏”になってしまい、そして“不安”も生じやすくなります。

 来月以降も、“不安”について話をしていこうと思っています。最後に皆さんに質問です。“不安”は“悪いもの”でしょうか? それとも“健康にとって必要なもの”でしょうか?考えこんでしまいそうな、悩ましい質問ですね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉