心療内科ってなぁに? 第88回 病気と健康の話⑥“不安”は必要なもの!?②

第88回 病気と健康の話⑥“不安”は必要なもの!?②

不安”は人の健康な営みとって大切で必要な感覚になります。もちろん、明日、明後日、明々後日・・・さらに先のことまで「考えて」しまうと、“不安”もどんどん増えていくので注意しましょう。先月、このように書きましたが、この点も“不安”を理解する上で大切なポイントになります。

 

 “不安”は「考える」という行為が多くなればなるほど増えていきます。“不安”と「考える」、一見つながりが無いようにも思えますが、実をいうと、この二つにはとても強い関係があります。あらためて“不安”と「考える」の関係をみていきましょう。

 

ここで1つ目の質問です。どちらの例が「考える」という行為をより多く行っているでしょうか?

例1)答えの出る問題(出来事)に対して「考える」?

例2)答えが出ない問題(出来事)に対して「考える」? 

 答えは例2)です。答えの出る問題では、文字通り答えが出るため「考える」という行為を多く行いません。一方、答えが出ない問題では、文字通り答えが出ないため、“どうして?” “なんで?”と、「考える」という行為を多く行います。

 

 続いて2つ目の質問です。例1)と例2)ではどちらの問題が「不確か」でしょうか?

もちろん答えは例2)です。答えが出ないということは、私たちにとって「未確定」で「不確か」なことになります。

 

 最後の質問です。例1)と例2)では、どちらが“不安”を多く感じるでしょうか?

こちらも正解は例2)です。答えが出ない問題は「不確かなこと」なので、私たちはより多くの“不安”を感じます。

 

なんとなく、“不安”が増えるからくりがわかってきましたか? ①「答えの出ない問題」があると私たちは「考える」という行為を多く行ってしまいます。②「答えの出ない問題」に対して私たちは「不確か」「未確定」と感じます。③“不安”は「不確かなこと」がある時にでてくる感覚です。①~③をまとめると・・・、「考える」という行為を行えば行うほど“不安”は増えていく、という事になります。

 

“不安”について知りたいと、インターネットや本で色々「調べて」いる患者さんがいます(結構います)。「調べて」答えが出ればよいのですが、インターネットを調べて多くの情報を集めても“不安”は減っていきません。それどころか、この「調べる」という行為は「考える」という行為が伴うので、「調べれ」ば「調べる」ほど“不安”は増えていくことになります。これでは悪循環に陥ってしまいますね。

では、“不安”を減らすにはどうしたら良いでしょう?皆さんも考えてみて下さいね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉