心療内科ってなぁに? 第89回 心と体の関係⑨ゆっくり動く練習

心療内科ってなぁに? 第89回 心と体の関係⑨ゆっくり動く練習

心は“体の運転手”。第3週は“体の扱い方” “運転技術”について書いています。心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得、についての話です。

 

 行ってみるとわかりますが“ゆっくり動く”という事は難しいことです。ボールを投げる、ボールを蹴る、バットを振る、踊る、走るなど、体を動かす動作にはいろいろなものがありますが、“ゆっくり動く”ことができるようになった時、一つ一つの動作が効果的になっていきます。もちろん、ただ“ゆっくり”動くのではなく“感じながら”動くことを忘れないで行ってみて下さい。足先、指先だけでなく、中心となる体幹も“感じながら”動けるようになった時に、その動作はより意味ある動きになっています。そして、動きに美しさが出てきます。

 

日常生活でも“ゆっくり動く”練習を行ってみましょう。いつものスピードの3050%の速度で動きましょう

口を動かしてみましょう “ゆっくり会話”

手を使ってみましょう  “ゆっくり飲食”

足を使ってみましょう  “ゆっくり歩き”

肺を使ってみましょう  “ゆっくり呼吸”

などいろいろ試してみて下さい。“感じながら”動けるようになった時に、その動作はより意味のある動きになります。

 

意識して“ゆっくり動く”ことは、「脳」の活動にブレーキがかかります。“ゆっくり”の感覚が、身体を通して脳に伝わると、脳の速度も“ゆっくり”になります。「脳」は“ゆっくり”に集中しているので、他の事を考えることができなくなります。「身体」から「脳」へ“ゆっくり”の刺激を送って、「ゆっくり脳」をつくってみて下さい。また、「脳」と「身体」を連動させて「体」全体で動くことを意識してみて下さい。

 

 “ゆっくり動く”ができるようになると、“早く動く”こともできるようになっていきます。その際は、“感じながら”動くことを忘れないようにしてみて下さい。

 

バットを振る、ボールを蹴る、どのような動きでも練習している時は、“うまくなりたい!” “上手に動きたい”などの意識 =「考え」が増えていきます。「考える」行為が増えている時には“感じる”が減っていきます(このことはすでにお伝えしましたね)。“早く動く”時は、“感じながら”がおろそかになりがちです。“感じる”が弱くなると、その動作の効果は減少してしまうので、注意して下さい。まずは3050%の速度で練習を行い、できるようになったら、“感じながら”を保ちながら徐々に60%、70%とスピードを上げてみて下さい。このように練習していくと、余計な力を入れないで身体を効果的に使えるようになり、スポーツや日常での“動き”が上達していくでしょう。「脳」のリハビリにも役に立つので行ってみて下さいね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉