心療内科ってなぁに? 第92回 心と体の関係⑩ “脳の使い方”を習得しよう!

第92回 心と体の関係⑩“脳の使い方”を習得しよう!

心は“体の運転手”。第3週は“体の扱い方” “運転技術”について書いています。心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得、についての話です。

 

車の運転には、アクセルとブレーキ両方の技術の習得が必要です。そして安全運転にはこの二つのバランスが大切になります。同じように、体の運転もアクセル技術とブレーキ技術の両方が必要です。そして健康運転もこの二つの技術のバランスが大切になります。ともすれば、どちらかを強調しがちですが、人の健康はバランスで成り立っています。「息を吐く」「息を吸う」や「伸びる筋肉」「収縮する筋肉」など、私たちが気付いていない色々な部位でバランスが保たれています。

 

体のどの部位でバランスが崩れているか、「使いすぎ」もしくは「使わな過ぎ」が生じているかをみていくと、症状の原因と改善方法がみえてきます。ストレスに関連する病気はバランスの悪さから生じます。ポイントは「アクセル技術」と「ブレーキ技術」をバランスよく習得することでしたね。また、「脳」と「身体」どちらもバランスよく使うことも忘れてはいけません。バランスが悪くなると「使いすぎ」もしくは「使わな過ぎ」という状態が生じます。「アクセル」ばかりで「ブレーキ」が弱いと(過ぎると)病気になります。「脳」ばかり使って「身体」を使わないと(過ぎると)病気になります。

 

心療内科を受診する患者さんは、「脳の使い過ぎ」から生じる症状で受診されるため、このブログの中では「脳のブレーキ技術」について多く書いてきましたが、「脳のアクセル技術」の習得が有効な病気について少し話しましょう。私たちの体には多くの臓器や機能が備わっているので、色々な病気があります。その中で、「脳をアクセルする」=「考える」という行為を増やすことが、症状の改善に必要な病気もあります。その代表が「糖尿病」です。ご存じかもしれませんが「糖尿病」の治療には薬やインスリンの注射薬を用います。加えて食行動をコントロールすることも大切な治療になります。

 

「立ち止まる,行動を止める技術」

「(食行動について)考える技術」

「1週間先の事を考える技術」

 

これらの技術は「糖尿病」の改善に必要です。“ごはんが美味しくてついつい食べ過ぎてしまう” “いつの間にかお菓子を一袋食べてしまった”、知らず知らずのうちに繰り返しているこれらの行動が「糖尿病」の原因になります。これらの行動が積もり積もって、身体の細胞が糖の処理できなくなった時に「糖尿病」は発症します。食べるという行動を行う前に、先ず立ち止まる、そして「脳」を使って考えてみましょう。今必要なカロリー(エネルギー)の量はどのくらいなのか?どのくらい食べたら身体(膵臓の細胞)に負担がかかるのか、どのくらいの量ならあまり負担がかからないのか?

 

安全運転は、車ドライバーの技術に左右されます。健康運転には、体ドライバーの技術に左右されます。皆さんもGoodな健康ドライバーを目指してくださいね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉