心療内科ってなぁに? 第94回 病気と健康の話⑧ 考えることが大好きな人

第94回 病気と健康の話⑧ 考えることが大好きな人

 皆さんは、“不安”のからくりについて、なんとなくわかってきましたか?「不確かなこと」「未来のこと」に対応しようとするとき、私たちは“不安”を感じ、多く「考えます」。そして、「考える」や「調べる」という行為を行えば行うほど、“不安”はセットで増えていてきます。この悪循環が“不安障害”のからくりです。

 

 では、どのような人が“不安障害”(過剰に不安を感じる病気)になりやすいのでしょうか?

 

 外来では“不安”は“考えることが大好きな人”の症状です、と伝えています。この「多く考える」「色々な事を考える」が、“不安”になりやすい人の特徴になります。日常生活を安定的に維持するために“不安”は必要な感覚ですが、過剰になると“不安障害”という病気になってしまいます。“考えることが大好きな人”は、日頃から「考える」という行為を多く行っています。普段から「多く考えている」人は、ストレス負荷がかかると、より多くのことを「考えて」しまいます。また、年をとると「脳」機能は低下して「考えることができる容量(キャパシティ)」が減っていきます。ストレスが増えて疲れているのに、「脳」を休めずに、キャパシティを超えて「考える」という行為を続けていると、“うつ病”や“不安障害”になってしまいます。“好きの向こう側に病気がある”でしたね。

 

 “不安症状”の強いAさんに“「考える」ことが大好きですね”と話しをすると、“いえいえ、私はあまり考えていませんよ”という返事が返ってきます。“不安”の強いBさんに聞いても、同じ答えが返ってきます。心療内科を受診する患者さんは、日常的に「多く考えている」という特徴を持っていますが、外来初診時には、皆さんその事に気づいていません。他の人と「脳」の中を見て比べることができない、また、どのくらい「考えている?」について検査データで示すことができないため、「脳」を多く使っていることを認識しにくい様です。

 “不安症状”にはお薬が有効なことがわかっています。「脳の使い過ぎ」が原因である“不安症状”には、「脳」の活動にブレーキをかけてくれるお薬が有効です。お薬は「補助ブレーキ」でしたね。お薬の手助けをもらって「脳」の活動が遅くなると、“不安症状”は減っていきます。少しして余裕ができたら、「多く考える」行為を少なくする技術を身に付けてもらいます。最初に身に付けてもらう技術は“「脳を多く使っている」ことに気がつく技術”です。つまり、“考えることが大好きな人”と自覚してもらうことです。このことを自覚できるようになると、少しずつ薬の量や種類が減っていきます。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉