心療内科ってなぁに? 第96回 自然と健康学びの場㉑

第96回 自然と健康学びの場㉑

 4月に入ると、草木がどんどん伸びてきます。満開だったアブラナ科の野菜たちですが、大根を残して花が終わり種に置き換わってきました。そのまま放っておいて種にしてまた秋に種をおろしても良いのですが、作業が大変になるのと、福岡病院では土地が少ないので次に植える夏野菜の準備ができないため、刈り取ってしまいました。チンゲン菜やタアサイは種をおろすとそのまま同じタアサイになりますが、スティックセニョールは品種を交配させてつくられている通称F1と呼ばれる種を用いているので、採取した種をおろすとスティックセニョールにはならずに普通のブロッコリーに戻ります。同じ野菜でも固定種:採取した種をおろすと同じ野菜ができるものや、F1:採取した種をおろすと交配前の野菜になってしまうものがあります。食卓に上っている野菜は、柔らかく味の良いものを目指して、研究に研究を重ねてつくられているのがよくわかります。自分で野菜を育ててみて、経験してみてその大変さが理解できると同時に、「ありがたいな~」「日本は何て色々な野菜がとれるのだろう」と感謝の思いも出てきます。大根は種を保存して、次世代につなげていこうと考えています。

   大根の花です。

 さて、刈り取った草花はそのまま地面に敷きます。太陽を浴びて育った草花はエネルギーを溜め込んでいます。その草花のエネルギーによって次世代の野菜を育てていくという方法が自然農のやり方です。実をいうと土だけでは草木は生えません。草木が枯れて積み重なった層の上に次世代の草木が生えています。ポイントはエネルギーです。畑の外からエネルギーを持ってくるか、畑の中で育った草木のエネルギーを用いて次世代の野菜を育てるかその違いで野菜の作り方が変わってきます。また、野菜の中にはあまりエネルギーのいらないマメ科や、多くのエネルギーを必要とするナス科など野菜の種類によって違いもあります。畑の違いや日の当たり方などを見極めながら、その土地にあった野菜を選択して育てていきます。太陽のエネルギーの大切さが実感できると同時に、雑草はとてもエネルギー効率の良い植物で、とても貴重なものに感じてしまいます。おかしいですか?雑草の生い茂った放棄された畑や田んぼをみると「野菜が良く育つだろうな~」とうずうずしてきます。また、雑草の生い茂ったちょっとした土地をみると「開墾したら野菜が採れるな~」など考えてしまいます。私だけではなく、自然農あるあるの話です。少しだけエネルギーの話に踏み込んでみました。この話を広げていくと、石炭や石油の話にもつながるので、皆さんも少し考えてみて下さいね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉