心療内科ってなぁに? 第104回 心と体の関係⑭“やらない”も過ぎると病気になります

心療内科ってなぁに? 第104回 心と体の関係⑭“やらない”も過ぎると病気になります

心は“体の運転手”。第3週は“体の扱い方” “運転技術”について書いています。心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得、についての話です。

 

先月のブログで「“やりたいこと”を優先し過ぎると不健康になりますよ!」このように書きました。今回は「“やらない”も過ぎると病気になります」という話です。

 

健康になる(健康を維持する)ためのキーワードは“バランス”でしたね。以前に「脳」のアクセルとブレーキの“バランス”を取りましょうと書きましたが、「脳」だけでなく「身体」にも意識を向ける必要があります。「車」は「エンジン(コンピューター)」と「車体」でできています。同じように、「体」は「脳」と「身体」でできています。「ドライバー(車オープンカーを運転する人のイラスト(男性)運転手)」が、「エンジン(コンピューター)」や「車体」を上手に“使う”もしくは“休ませる”ことができると、「車」は故障が少なく長持ちします。同じように、「体ドライバー(体運転手)」が「脳」や「身体」上手に“使う”もしくは“休ませる”ことができると、「体」は故障が少なく長持ちします。「体=脳+身体」を“無理なく使える”ようになると、“症状が減る”=“健康”を実感できるようになれます。

 

さて、“やらない or 使わないが過ぎる”とはどういうことでしょう?これは、文字通り「脳」を使わない、「身体」を使わない、という事になります。では、「脳」や「身体」を使わないと、どうなるでしょうか?どのような症状が生じるでしょうか?

 

「脳」を使わないということは「考えない」という事になります。以前にも書きましたが、「考える」ことをしないでお菓子を食べ続けると病気になってしまいます。医学の発展から、お菓子を多く食べ過ぎると糖尿病になることがわかっています。そして糖尿病は脳梗塞や心筋梗塞、癌などの嫌な病気のリスクをあげることもわかっています。これらの情報を知って「考えて」「行動する」「対応する」ことが、自分自身の健康を維持するために大切です。

 

人は外界からの情報を集めて、その情報を処理して「考える」ことで未来に起きる問題に対応しています。いざという時に“食料を蓄える” “お金を貯金する”、将来のために“勉強する” “資格をとる”、これらの行動には、「考える」という行為が必要です。もし災害や将来のことに対して「考える」という行為ができていない場合は、これらに対する備えも行わなくなります。実際に災害が生じたときには備えがなく生活に支障が出てしまいます。同じように、健康の事について「考える」ことができない場合は、「脳」や「身体」を大切にしなくなり、病気になりやすくなります。医学の発展から得た知見を基に、自分自身の体大切に維持しようという目的で「考える」という行為を行うと、健康(病気)に関連する問題に、上手に対処できるようになります(もちろん考え過ぎは良くありません)。

 

森の中を歩く人達のイラスト次に、「身体」を使わないとどのようなことが生じるかについて、見ていきましょう。車に例えると「身体」は「車体」でしたね。「車」を全く動かさずに使わないと、「車体」はどんどんさびてしまい、タイヤは動かなくなり、ブレーキも壊れてしまいます。「身体」も同じです、使わないと機能がどんどん衰えていきます。定期的に「身体」を使う、“歩く” “ジョギングする” “ヨガをする” “野球をする”など、手足を定期的に動かす事が「身体」の維持には大切です。

 

 最後に、「脳」と「身体」の“バランス”についても考えてみしょう。私が中学生の時、「脳」ばかり使って「頭」が大きくなり「身体」が退化した宇宙人の絵を見たことがあります。この宇宙人は「脳」が発達して「頭」が大きくなった一方で、「身体」を使わなくなり、その機能は衰えてしまい機械で代用されていました。では、ここで質問です“この宇宙人は健康でしょうか?それとも病気でしょうか?” “「脳」ばかり使って「身体」をつかわないと、私たちはどなるでしょうか?”

 

このブログを読んでいる皆さんは、答えを出せたのではないかと思います。車で例えると「エンジン」ばかり動いていて「車体」は動いていない状態は、“空ぶかし”でしたね。“空ぶかし”では、熱が発生し、煙がでて、悪化すると「エンジン」は燃えて壊れてしまいます。体でも同じようなことが生じます。「脳」ばかり動いていて「身体」を動かしていないと「脳」の“空ぶかし”=“考えすぎ”の状態になります。“考えすぎ”の状況でも熱を発生させます。“考え過ぎる”と「頭」から煙がでる感じも体感します。悪化すると「脳」で痛みを感じるようになり(頭痛)、機能異常を起こして壊れてしまいます(病気になります)。また、「脳」ばかり使い「身体」を使わないと、「身体」の機能はおとろえていきます。「身体」の機能がおとろえると、色々な「身体」の異常がでて、その情報は「脳」に伝わり症状として認識します。

 

先の宇宙人は、「脳」の症状、「身体」の症状、色々な症状で悩んでいるのかもしれませんね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉