心療内科ってなぁに? 第106回 病気と健康の話⑫「脳」と「身体」をバランスよく使いましょう

心療内科ってなぁに?第106回病気と健康の話⑫「脳」と「身体」をバランスよく使いましょう

以前「不安を減らす」ための技術として、「考える」という行為を減らす技術や、「考える機会を増やさない」技術を紹介しましたが、これらの技術が上手になると、どうして「不安」が減るの?という質問を受けました。少し詳しく説明していきたいと思います。

 今回は、「ゆっくりと動く技術」「全身を使って行動する技術」「「脳」と「身体」をバランスよく使う」についてです。

 

「身体」は一つしかないので、「行動」も一つずつしか行えません。一方で、「脳」の中で行える“思考の世界” “バーチャルの世界”では、たくさんの「仮の行動」ができます。私たちは現実の「行動」で失敗しないように、「脳」の中で「仮の練習」を行ってから「実際の行動」を行っています。特に“重要な会議での発表”や“入学試験を受ける時”など、大切なポイントでは、失敗しないように繰り返し「仮の練習」を行ってから本番に臨んでいます。

最近の科学技術の発展に伴い、現実の感覚に近いような「仮の行動」を体験できるようにもなりました。“バーチャルの世界”を実体験のように感じ取れるようになりました。

「脳」を多く動かせば動かす程、より多くの「仮の行動」ができ、色々な事を達成することができます。ゲームの世界では、敵に勝利することや、パズルを成功させることで、達成感(脳の興奮≒報酬系)を感じています。

 

不健康な脳のキャラクター

ゲームを行うことは楽しいものです。適度な量であれば、「脳」のトレーニングになりますが、やり過ぎると病気になってしまいます。どのような病気になるかというと、1)「脳」の使い過ぎからくる機能的な病気、2)「身体」機能の低下からくる機能的な病気です。また、3)「行動の異常」も生じます。「脳」と「身体」のバランスの乱れが、長期間にわたって続くと、これらの病気が生じます。

今回のテーマは、「考える」という行為を減らす技術についてです。「脳」は一つ「身体」も一つです。「脳」と「身体」をバランスよく時には休ませながら使う事が、健康になるための秘訣です。普段から「脳を多く使っている」人は「考える」ではなく「身体を使う」ことを優先させて動いてみましょう。そして、あえて「ゆっくり行動」してみましょう。あれやこれや考えながら行動するのではなく「一つずつ行動する」ことも意識してみましょう。

 

一方で、「身体」ばかり使い過ぎても病気になってしまいます。“食べ過ぎ” “飲み過ぎ“で「内臓」を酷使していませんか?“仕事が忙しい” “運動し過ぎ”で「身体」を酷使していませんか?このような時はいったん立ち止まって「考えて」、「脳」と「身体」のバランスを整えてみて下さい。

 

「脳」と「身体」、バランスよく使う事が健康の秘訣です。皆さんはどのように「脳」と「身体」を使っていますか?

  1. 「脳」ばかり使っている人は、「脳」を休めましょう、余裕があれば「身体」を使う事を意識してバランスをとりましょう。
  2. 「身体」「内臓」ばかり使っている人は、「身体」「内臓」を休めましょう、余裕があれば「脳」を使う事を意識してバランスをとりましょう。
  3. 「身体」「脳」どちらも使っていない人は、両方使うようにしましょう
  4. 「身体」「脳」両方使い過ぎている人は、両方休めるようにしましょう

 

 「不安」が多い人は「脳」を多く使っている人でしたね。1)を意識しながら、「ゆっくりと動く技術」「全身を使って行動する技術」「「脳」と「身体」をバランスよく使う」を身に付けていってみて下さい。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉