心療内科ってなぁに? 第107回 心と体の関係⑮「行動」って何だろう?

心療内科ってなぁに?第107回心と体の関係⑮「行動」って何だろう?

心は“体の運転手”。第3週は“体の扱い方” “運転技術”について書いています。心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得、についての話です。

 

心療内科で患者さんに関わっていると、「行動」という問題に直面します。「行動」の異常については精神科の先生方が専門に治療を行っていますが、身体症状を強く訴えている患者さんの中には「行動」の異常を伴っている方がいるので、心療内科でも「行動」の問題に対応していく必要が出てきます。「行動」って何だろう?どうしてこのような「行動」をとるの?なぜ、繰り返し自分自身を傷つけるような「行動」をとるの?患者さん診ていると色々な疑問がでてきます。

 

「行動」という言葉をテーマにしたときに、“「行動の異常」に薬は効果がない”という事が思い浮かびます。この点はとても大切なポイントで、診療での経験から学びました。薬の効果は受容体を介して発揮し、受容体のある「脳」や「身体」の症状に有効です。一方、「行動」には受容体が無いので、「行動の異常」に効く薬はありません。睡眠薬を投与すると、「脳」の働きが抑制されて「行動」がゆっくりになるなど、間接的に影響を及ぼすことはありますが・・・。「行動」の向上には、全身をつかった「経験」や「学習」が必要と感じています。

 

整備不良車のイラスト

 車に例えると、「行動=ドライビング」の問題に修理工場での修理や補修が効かないという事になります。車の症状は“ガタガタ”という音や、“ピーピー”というアラート信号に相当します。長く車を使っていると、ネジが緩んだりして色々な音が生じやすくなります。これは大きな故障の前兆です。また、ガソリンが少なくなると赤いランプがともります。もちろんガソリンを補給して欲しいという車からのサインです。これらの症状は、修理をしたりガソリンを入れたりすることで改善します。一方、「ドライビング」は運転手の問題なので、修理は無効です。人における「異常な行動」とは「危険な運転」に相当します。「危険な運転」に修理は無効なのと同じように、「異常な行動」にはお薬や手術は無効です。「行動=身体ドライビング」は「体=脳+身体」の問題ではなく、「心=運転手」の問題だからです。

 

 今回は「行動の問題」について書きましたが、皆さんはどのように感じましたか?

 

人の症状や異常には、「体(脳と身体)」の問題と「心」の問題とがあり、それぞれ対応方が違うので、分ける必要があります。

 

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉