心療内科ってなぁに? 第111回 心の成長(病気と健康)の話②:行動と「身体」の健康:どうすれば「身体」の健康をたもてる?

心療内科ってなぁに?第111回心の成長(病気と健康)の話①:行動と「身体」の健康:どうすれば「身体」の健康をたもてる?

“心”は“体の運転手”。第2週は“心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得”や“どのようにしたら行動は成長する?”についての話です。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。

 

どうすれば、「身体」の健康をどう保つことができるでしょうか?

 

「身体」の機能や能力には個人差があります。脂肪を溜め込める(太れる)/溜め込めない(太れない)、消化機能が強い/弱い、たくさん食べられる/少しか食べられない、早く走れる(筋肉が発達している)/走るのが苦手な人など、個人によって「身体」「身体能力」の違いがあります。また、年齢やその時々の状態によっても変化します。年を取るにつれて処理能力や容量は衰えていきます。ピークは何歳くらいでしょうか?「身体」「身体能力」のピークは25~30歳代でしょうか?私の場合は28歳くらいまではサッカーの試合に出ることができていましたが、それ以降は“しんどくて広いコートを走れないと”感じる様になりました。

 

文化や人種によっても変わってきます。他の国の人と比べると、日本人の「身体」は大きくありません。短距離走など瞬発力が必要な競技では外国の方の方が強い印象です。ウエイトリフティングなど力が必要な競技も苦手です。一方で持久力が必要なスポーツは得意です。また、細やかな感性を持ちスピードへの対応能力は高いようです。スキージャンプやスケート競技、スノーボード、卓球などで多くのスポーツ選手が活躍しています。集団で協調しチームとして競う競技も得意で、サッカー、バレーボール、バスケットボールなどでの団体競技でも力を発揮しています。これらの性質には、農耕民族として生きてきた文化が影響しているかもしれません。土を耕すためには毎日毎日粘り強く身体を使う必要があります、自然を相手に作物を安定的に育てるには、ため池を作ったり、灌漑工事をしたり、他の人たちと協力しながらおこなっていく必要があります。

 

「身体」の健康を保つためには、自分自身の「身体」にどのような特徴があるのかを知ることが大切です。そして、「身体」を使っている“心”=“運転手”の癖も知る必要があります。目に見えない「脳」を使うという行動(行為)とは違い、手足を使った「身体」の行為・行動は間に見えるのでその特徴はわかり易いです。

 

食べることが好きですか?いつもお腹いっぱい食べていると病気になってしまいます。

お酒を飲むことが好きですか?いつもお酒を飲んでいると病気になってしまいます。

お漬物が好きですか?塩味が好きですか?いつもお漬物を沢山食べていると病気になってしまいます。

走ることが好きですか?自転車に乗ることが好きですか?若い頃と同じような量の運動を行っていると「身体」に故障が生じます。

好きな事、得意な事の向こう側に病気があります。症状は“使いすぎ” “やり過ぎ”によって生じます。“心”の癖 =「行動の特徴」を知ってもらうこと(知ること)は、病気にならない、症状を軽くするための大切な治療法です。

 

難しいな?と感じている方は“車”の例と比べながら「身体」の使い方について考えてみましょう。“車”にも色々な種類があります。“車”といえば“乗用車”をイメージしやすいですが、“バス” “タクシー” “トラック” “ショベルカー” “スポーツカー”など色々な種類があり、それぞれで能力が違います。また、使用する人によってヘビーに使うか、ライトに使うか違います。“車”の健康を維持するためには、力が強い/弱い、スピードが速い/遅い、新しい/古いなどに合わせて、適切に使うことが大切です。もちろん“使う”だけでなく“休ませる” “メンテナンスする”ことも大切です。使用者がその時々に合わせて上手に“使い” “休ませる”ことができると、道具の故障(症状)は少なくなっていき、“車”の健康が維持されます。バランスが大切ですね。

 

皆さんは「身体」を上手に扱えていますか?

「身体」の機能をその時々に合わせて上手に使えるようになると、機能異常は生じにくくなり、症状(アラート信号)は減っていきます。“心”は体(脳+身体)の運転手。「身体」のメンテナンスができるようになり、扱い方が上手になると、「身体」の健康を保てるようになります。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉