心療内科ってなぁに? 第113回 心の成長(病気と健康)の話③:どうすれば「膵臓」の健康をたもてる?

<心療内科ってなぁに?113回心の成長(病気と健康)の話③:どうすれば「膵臓」の健康をたもてる?>

“心”は“体の運転手”。第2週は“心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得”や“どのようにしたら行動は成長する?”についての話です。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。

 

先月は、行動と「身体」の健康の話をしました。

今回は、「身体」の中の「内臓」「臓器」を例にあげて話していきたいと思います。

 

「膵臓」の細胞では血糖値をコントロールしているインスリンというホルモンを作っています。食事が糖分に分解されて血中に入り、膵臓内を流れる動脈の血糖値が上昇するとインスリンが血管内に放出されます。インスリンの分泌は神経系からも調整を受けています。

 

たくさん食べると血中内の糖分がおおくなります。糖分を処理するために多くのインスリンが必要となります。短期間であれば良いのですが、長期間、数年にわたって多く食事をとり続けていると、膵臓の細胞も疲れてしまいインスリンを作る能力が減っていきます。それでもなお多く食べ続けていると、十分なインスリンの量を作れず、血中の糖分調整ができなってしまいます。“好きな事・得意な事の向こう側に病気がある”でしたね。食べることが好きで、いつもお腹いっぱい食べて、長期にわたって「膵臓の細胞を酷使し過ぎる」と、糖尿病という病気になってしまいます。

 

血中の糖分が増えていくと、血管はどうなるでしょうか?

 

ジュースをテーブルにこぼすとテーブルはどうなりますか?テーブルはベタベタになってしまいますね。ジュースを飲むと口の中、歯はどうなりますか?口の中がもっさりしてお茶などさわやかな飲み物が欲しくなります。また、歯がベタベタになるので歯磨きを行なう必要が出てきます。夜にお菓子を食べたまま寝てしまうと、虫歯になってしまいます。このようなベタベタの物が血管の中にあるとどうなるでしょうか?もちろん血管がベタベタになってしまいます。ある程度のベタベタは細胞によって掃除されますが、過剰なベタベタがあると血管に問題が生じます。ベタベタによって小さな血管が詰まってしまいます。小さな血管だけでなく太い血管の病気の原因になります。また癌のリスクにもなります。

 

この糖尿病を防ぐには、どうしたらよいでしょうか?病院に行って診断を受け、お薬による治療を受けることが大事です。そして食事の摂取についての指導を受けて、適切な量の食事をとれる膵細胞のイラストようになることが必要になります。糖尿病は長期間にわたって膵臓の細胞を働かせたことが原因なので、疲れた膵臓の細胞を休ませることが治療の要になります。糖尿病の治療ではインスリンを外部から補って膵臓を休ませるという治療を行うこともあります。膵臓の細胞にまだ余力があると膵臓はまた元気になります。けれども、あまりに長く働かせていると、膵臓は元気になり切れない場合がでてきます。その際は飲み薬の治療では追いつかず、外部からインスリンを補充しなくてはいけなくなります。また、年を取ると細胞の機能は低下していくので、体質によっては“あまり多く食べていなかったのに”糖尿病になってしまったという方もいます。“あまり多く食べていなかったのに”と思っていても、この飽食の時代、食事量が多くなりがちなので注意しましょう。一方、過剰な摂取とは反対の症状(病気)もあります。血中の糖分が少なくなり過ぎると低血糖という症状が出現します。糖分は「脳」の活動に必要なので適度な糖分を摂取するよう心がけましょう。バランスが大切ですね。

 

 大切なことは“健康を保とう”とする「運転手の心」と「行動」です。「心」は目に見えませんが「行動」は目に見えます。そして体重も目に見えます。「膵臓」の健康を保つためには、自分自身の「食行動」にどのような特徴があるのかを知ることが大切です。

「身体」の機能をその時々に合わせて上手に使えるようになると、異常は生じにくくなり、症状(アラート信号)は減っていきます。“心”は体(脳+身体)の運転手。「膵臓」のメンテナンスができるようになり、扱い方が上手になると、「膵臓」の健康を保てるようになり、糖尿病や関連する病気(糖尿病合併症、心臓や脳血管障害)になりにくくなります(今回の話は2型糖尿病の話です)。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉