心療内科ってなぁに? 第114回 医食農の話③

<心療内科ってなぁに?114回医食農の話③>

第4週は自然(食事)と健康についての話題です。自然農の話だけでなく、食べ物と味との関係やエネルギー、漢方薬についても話していきます。

 

自然に近い環境で切磋琢磨して成長した作物は、市販の物(肥料で補われた作物)と比べて元気な作物になります。違う環境で育った作物を並べて、数日~数週間放置しておくと違いが判ります。自然の環境で育った作物は放置しておくと水分が抜けていき少しずつしおれていきます。一方、成長過程で多くの肥料(エネルギー)をもらい育った栄養過多の作物は、菌が繁殖して腐ることがあります。経験した例では、畑から収穫したキュウリやレタスは2~4週間冷蔵庫の中に保存していても、シャキシャキで水分が保たれていました。ゆっくり成長したからか、繊維が細かく保水力があるようです。“あ~食べるのを忘れていた”と冷蔵庫の奥に潜んでいる野菜を見つけたときも、大丈夫か?と確認しながら食べています(自己責任ですが・・・)。

 

切磋琢磨して育った野菜はやや皮が固い傾向があり、ゆっくり時間をかけて育ったからか、内の線維が柔らかく細かくなります。一方、肥料で補われた野菜は生長期間が短くなり(早く成長し)、皮は柔らかく“ボン”と大きくなり、内の線維は太く硬くなる傾向があります。これらの野菜は、見た目ではわかりにくいのですが、元気さと味で違いが出てきます。安定的な作物の生産には、成長の過程で外からエネルギーや補助成分を補う事は大切ですが、補い過ぎるのは良くないので、「野菜そのものの元気さを育てること」と「外から補うこと(手助けすること)」のバランスに注意が必要です。子育てにも通じるような気がします。野菜を育てていると色々な気づきを得られます。

 

以前にも書きましたが、自然農で育った野菜はぎゅっとしまった濃い味がします。収穫した豆を最初に食べた時、味にこれほど違いが出るのかとびっくりしたことを思い出します。豆ごはんは臭みがあり好みでなかったのですが、自然農の豆を使った豆ごはんを食べた時は、豆の甘みがご飯にもいきわたり、とても美味しかったことを覚えています。しかし、濃い味が必ずしも美味しい味になるとは限りません。私はセロリやニンジンなどセリ科の野菜が苦手ですが、これらの野菜はセリ科独特の風味も増すので私にとっては少し食べにくくなります。ニンジンやセロリを生で食べられる人など、セリ科の食べ物が好きな人にとっては美味しいようです。火を通すと味がガラッと変わって食べやすくなる野菜もあります。えぐみや臭みはないので、ニンジンも火を通すと私でも美味しく食べることができます。

 

ちなみに、野菜の成長過程で甘い肥料を補うと、野菜の味は甘くなります。一方、農薬をまくと、野菜に農薬の味?がするようになります。野菜を育てていると、畑に入れたものが野菜の味に影響していることを実感します。また、季節によって野菜の味わいが変わります。ネギは暖かいときに収穫して食べると、味はぼんやりで苦味があり“うまい!”とは言えません。早く食べたい気持ちをぐっとこらえて収穫を待ち年を越すと、寒さで味が締まり甘みがぎゅっと増します。この時に収穫したネギの感想は“めっちゃうまい!”“ばりうまい!”です。生のネギでも食べることができ、辛味と甘みを感じます。焼いたり、煮たり、少し火を入れると甘みがぐっと増して、箸が止まらなくなります。ネギ好きの人が食べると、思わず「ふーん」と声を出すくらい美味しくなります。

 

ネギの感想を多く書きましたが、自然農でつくると、玉ねぎやラッキョウ、ニンニク、ニラなどユリ科の作物はえぐみがなくなりとても甘くなります。一方、自然農では、育成期間が長くなったり、野菜が十分に大きくならなかったり、旬以外の時期に野菜を供給できなくなるなどの問題点が出てきます(私は、普段使いはスーパーの野菜を用いて、畑で実った時には自分で作った野菜を収穫して食べるようにしています)。色々な試みを行いながら実際に野菜を育てていると、経験値が増えていくので選択の幅が広がります。経験値を増やして未来への選択枝を増やしていく事は、健康になるための大切なポイントです。余裕があったら、皆さんも野菜つくりを経験してみて下さいね。

 

 

今年も出ました“ど根性大根”です。昨年花をつけていた大根から種が出て、こぼれて畑に落ちた種から発芽して大きくなりました。大根は毎年こぼれ種(種をまいていない所)から出てきます。食べるか?食べないか?このまま放っておいて、花を咲かせて種を採るか?悩んでいます。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉