<心療内科ってなぁに? 第132回 医食農の話(12) どうして、妊娠するとすっぱいものが欲しくなる?>
第4週は自然(食事)と健康についての話題です。自然農の話だけでなく、食べ物と味との関係やエネルギー、漢方薬についても話していきます。
「どうして、妊娠するとすっぱいものが欲しくなる?」
酸っぱいものを食べて、飲んで、体(脳と身体)に生じる変化を体験して、皆さん自身の答えにたどり着けましたか?
妊婦さんがすっぱい物を欲しがるのは有名な話です。そんなの迷信だ!なんて言わないでください。実際に多くの妊婦さんは妊娠初期に「すっぱいものが欲しくなる!」と話しています。では、なぜ妊婦さんは、酸っぱい物を欲しがるようになるのでしょうか?
妊娠中、妊婦さんは身体の中に大きな物(赤ちゃん)をため込まなくてはいけません。とても大きなものをため込む必要があり、そのためにこの時期は、自身の体(体質)を大きく変化させる必要があります。赤ちゃんを身体の中に納めて、育てることができるように、栄養素や水分など、いろいろなものを集めることができるように、体は物を集める体質に変化します。
「どうして、妊娠するとすっぱいものが欲しくなる?」
この質問の答え、皆さんはもうわかりましたね。妊娠中、特に妊娠初期は、収斂作用が強い状態(体質)に妊婦さんは変化します。この収斂作用の力を使って数カ月もの間、赤ちゃんを体の中に宿しています。妊娠直後、妊婦の身体は収斂する(できる)体質に急激に変化していきます。そのため(身体を変化させる手助けのために)、収斂の作用のある酸味を多く欲するようになります。
漢方薬の処方に“当帰芍薬散” “当帰散”というものがあります。これらは安産の薬として有名で、当帰と芍薬が入っています。当帰は甘味(辛味苦味)の生薬で血を補い巡らす作用があり、芍薬は苦酸味の生薬で血液を血管・子宮内に集めてくる作用があります。当帰と芍薬の効果で血液の流れを改善し、安産に寄与しています。
逆に、妊娠時の使わないほうが良い生薬は、物を強く発散させたり、砕いたり、瀉下痢させるものになります。強い辛みの薬、オ血を砕く薬、瀉下痢作用の強い薬は、収斂作用を弱め、ため込んだ物を砕き、血や津液(水)を体外に排泄させてしまいます。つまり、赤ちゃんを宿しにくい体質にしてしまうということです。とはいっても、辛い物をたくさん食べている人が妊娠できないというわけではありません。個人差があり文化や体質によるところも大きいです。元々収斂作用が強い体質があり血が集まり凝りやすい人の不妊治療に、オ血を改善させる桂枝茯苓丸を用いることもあります。個人の体質に合わせて漢方薬を使うことが大切です。自分の体質を知ってバランスを取ることが健康になるための秘訣でしたね。

「どうして、妊娠するとすっぱいものが欲しくなる?」
皆さんの答えはどうだったでしょうか?このブログの答えと同じでしたか?
酸っぱいものを食べて、飲んで、体(脳と身体)に生じる変化を体験しながら、皆さん自身の答えを見つけてくださいね。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
