<心療内科ってなぁに? 第131回 症状ってなぁに?(4) ストレス刺激と成長>
“心”は“体の運転手”。 メンテナンス技術と運転技術(ドライビング技術)、これらの技術を身に着けていくことが、「心Coro Heartの成長=行動の成長」につながります。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し、健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。
ホメオスターシス(生体恒常性)を学んでいくと、必要なメカニズムがより適切なものとなるように、体(脳+身体)が外部の情報を得て学習し、その機能を向上させていることがわかります。
私たちの外部環境には、温度、圧力といった生理・機械的刺激、細菌やウイルスといった生物学的刺激、人間関係などの心理社会的刺激といった、様々な情報であふれています。私たちは知らない間に、これらの刺激を情報として受け取り、学習して、対応できるようになっています。体内(脳内+身体内)にはAIに劣らない自動学習機能が備わっています。
コロナワクチンの例を示しながら、この自動学習機能について説明しましょう。コロナワクチンを投与すると、免疫機能がコロナウイルスの情報を習得し、免疫系が学習することで、コロナウイルスに対する対応が向上します。これはコロナウイルスという外的から内的環境を維持するための機能を学習し維持する過程、機能の成長と考えられます。小さい頃に投与された、日本脳炎、風疹、麻疹などのワクチンも同じ理屈です。各種ウイルスの情報を体内に入れることで、免疫系の学習を促し、大きな災いを防いでいます。科学技術の進歩のおかげですね。
免疫機能だけでなくホルモン調節や「行動」の成長にも、腸管からの刺激が必要であることも知られています。通常の腸内細菌叢を持つマウスと無菌マウスにそれぞれ心理的ストレス負荷を行い、その前後でストレス応答を調べたところ、無菌マウスではストレス後に血中の下垂体から分泌されるACTHおよび副腎皮質から分泌されるコルチコステロンといったホルモンの上昇がみられましたが、通常マウスでは認められませんでした。少し難しいかもしれませんが、無菌マウスではストレス応答への学習がうまくできておらず、ストレス応答が過剰になっていると考えられています。また、無菌マウスでは通常のマウスよりも不安行動が多いことも示されています。このような未熟な応答をする無菌マウスに、通常マウスの腸内細菌を投与すると、ストレス反応や「行動」が改善することから、脳と腸は双方向に情報伝達を行い、相互に作用を及ぼし合いながら機能を向上させていることが示されています。
行動の中にも成長につながる「ストレス(刺激)」があります。スポーツをしながら成長する、学問をしながら成長する、絵や音楽を通して成長するなど、このような成長を感じている時にある「刺激(ストレス)」です。
外界からのストレス刺激、体内からのストレス刺激、色々な刺激があって、私たちは成長しています。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
