心療内科ってなぁに? 第134回 医食農の話(13) 自然と科学のバランス、身体と脳のバランス

心療内科ってなぁに? 第134回 医食農の話(13) 自然と科学のバランス、身体と脳のバランス

 

第4週は自然(食事)と健康についての話題です。自然農の話だけでなく、食べ物と味との関係やエネルギー、漢方薬についても話していきます。

 

 冬になりました。正面玄関横の花壇には10月から日の光が入っていません。その中でも大根は枯れることなく(大きく成長することもなく)、生きています。以前テレビでみた、アスファルトの間からでてくる「ど根性大根」を思い出します。大根は強いですね、2月に入り、少しずつ日の光が直接当たるようになれば、大きくなるのでは?と思っています。

 

 このような場所ですが、スタッフより草花を植えてみたいという申し込みがありました。できれば、日のよく当たるところを提供したいのですが、まずは玄関回りをきれいに保ち、維持できるようにと、この場所から始めています。ガーデニングのイラスト(おばあさん)

 

病院内での草花の育成には制限を設けています。例えば、

・花を目的とした植物を植えて下さい。野菜やその他の植物に関してはその都度相談下さい。

・除草剤など化学肥料や薬品の使用は禁止とします。

・牛糞や鶏糞を材料とした肥料の使用は禁止とします。

・腐葉土など自然由来の肥料の使用はOKですが、自然由来であったとしても石灰を大量にまくなどその場所の環境をがらりと変えてしまうことは禁止します。

などです。

 

どうしてこのような制限を設けているかというと、「自然を自然のままに感じて、触れ合ってほしい」「その中で健康について学んでほしい」ということを目的にしているから。そのほかにも、臭いが出ないよう、持続可能にしたいためなどの理由もあります。

 

「自然を自然のままに感じて、触れ合ってほしい」このように書くと、化学物質が悪いとか、化学肥料が悪いと言っていると勘違いされることがありますが、決して“○○が良い” “〇〇が悪い”と言っているわけではありません。私たちが食べているお米や野菜が安定的に供給されているのは科学の力です。病院で使用している薬は工場で作られている化学物質です。自然の草花に近い漢方薬も薬として使用していますが、病院内の技術はほとんど科学の結晶で成り立っています。病院で働いている私たちはこれらの技術を使用しながら、患者さんの症状の改善に日々関わっています。

 

「自然を自然のままに感じて、触れ合っていく」と、色々なことがわかってきます。“除草剤や肥料を入れずにお米や野菜を作るのがどれほど難しいか”について知ることができ、また、“安定供給することがどれほど大変か”についても知ることができます。栄養が足りないと草花は元気に育たない一方で、栄養を与えすぎると草花は病気になりやすくなります。雑草がある場所でほかの植物と切磋琢磨しながら成長できた草花は元気で、その植物からとれる野菜は味わいが深くなります。これらの経験を通して、病院で行っている治療についても、理解が深まっていきます。

 

健康を維持するにはバランスが大切です。私たちの体内は、生理機能、電解質、栄養、ホルモンなど、ありとあらゆる事柄でバランスが保たれるように調整され、恒常性が保たれています。体の内だけでなく、体の外でもバランスは大切です。体の外とは私たちがどのように自分自身の体(脳と身体)を使っていくか、別の表現を用いると、私たちがどのように「行動」するかです。バランスよく「行動」を選択して、実行していくことが、健康の維持に大切です。

 

自然を求めて行動し、その欲求がどんどん強くなっていくと、行きつくところは、山の中の一軒家で自給自足の生活を求めていくということになります。これは大変ですね。皆さんできますか?家を建て、水を運び、野菜を育てる。まったく科学の力を使わない!という人がいたとすると、斧やナイフもなく石器を使わないといけなくなります。

一方、科学を求めて行動し、その欲求がどんどん強くなっていくと、インターネットで買い物をする、コンピューター越しで会話をする、サプリメントばかり食する、という生活になっていきます。さらに、この欲求がどんどん強くなって、家から一歩も出ない生活になると、体の機能は衰えていきます。

 

体(脳+身体)は、使い過ぎても、使わな過ぎても、バランスの歪みが生じて、症状が生じ、病気になってしまいます。自然が多い環境に近づけば近づくほど、身体を多く使うようになります。科学が多い環境に近づけば近づくほど、脳を多く使うようになります。健康を維持するには、また、病気にならないようにするには、自らの体(脳+身体)と会話しながら、脳と身体をバランスよく使いながら生活していくことが大切です。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉