はじめに
3月3日は「耳の日」です。「耳の日」は、難聴と言語障害をもつ人びとの悩みを少しでも解決したいという、社会福祉への願いから始められ、日本耳鼻咽喉科学会により1956(昭和31)年に制定されました。
一般の人々が耳に関心を持ち、耳の病気のことだけではなく、健康な耳を持っていることへ感謝し、耳を大切にしようと心がける日であるとも捉えられています。
なぜ3月3日?
3月3日の由来についてはいくつかあり、「3(み)3(み)」の語呂合わせとも、「3」が耳の形に似ているからとも言われています。
この日は、三重苦のヘレン・ケラーに家庭教師のアン・サリヴァンが指導を始めた日であり、また、電話の発明者であり、ろう教育者であったグラハム・ベルの誕生日でもあります。
2007年には、WHOが3月3日を「International ear care day」(国際耳の日)とすることを宣言しました。「3」が耳の形に似ているという感覚は万国共通のようです。
日本耳鼻咽喉科学会ホームページより引用
耳の機能、構造
私たちにとって耳は、外界の音の刺激から危険を察知し、また言語を習得して他者とコミュニケーションを取るための重要な器官です。 耳は「聴く」という聴覚の他に、「身体のバランスを取る」平衡感覚を司っています。
「耳」は外側から外耳・中耳・内耳と3つの部分に大きく分けられます。 主な働きとその部分をお示しします。
- 外耳: 音を集める
- 通常「耳」と呼んでいる「耳介」
耳から鼓膜までの耳の穴(=外耳道) - 中耳: 音を伝える
- 鼓膜の奥の空洞「鼓室」の中の音を伝える3つの「耳小骨」
鼻の奥へ繋がる「耳管」 - 内耳: 音を感じる
- 中耳のさらに奥、音を感じる「蝸牛」
平衡感覚を司る「三半規管」、「前庭」
伝わってきた音に対して、意味のあるものとして理解させるのは、脳の仕事です。音を感知するのは「耳」ですが、最終的に音を判断するのは「脳」です。
左右の耳から各々に伝わってきた信号を脳が処理することで、音源の位置なども判断します。 このように、私たちの耳には複雑な仕組みがあり、日常生活において重要な役割をしています。
耳の聞こえの検査について
耳の聞こえの検査(聴力検査)は、健康診断の基本項目に含まれていますので、検査を受けたことがある方は多いと思います。健康診断では、低い音(1000Hz)と高い音(4000Hz)の2種類の音で検査をします。
1000㎐は日常生活での会話に必要な聴力が保たれているかどうかを調べ、 4000㎐は会話では分かりにくい難聴、病気や異常を早期発見するための検査になります。
加齢などによる老人性難聴の多くは、日常会話域よりも高い音域から始まるとされます。日常生活の中で聴力の低下は自覚しにくく、気づいた時には既に難聴が進行していることもあります。
耳の調子はいかがですか?
耳鼻咽喉科では、より詳しい検査が可能です。また、普段なかなかチェックすることが難しい耳の中の状況(耳垢が溜まりすぎていないか、外耳炎、中耳炎などがないか)が確認できます。
3月3日の「耳の日」を機会に、ご自分の「耳」について見直してみませんか?
国立病院機構 福岡病院 耳鼻咽喉科医師 押川 千恵