2021年7月度 今月の特集「肺の日」

はじめに

8月1日は肺の日です。肺の日は、日本呼吸器学会が肺の成人病と呼ばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の予防の大切さやたばこの害を多くの人に知ってもらうために、1999年(平成11年)8月1日に制定した記念日です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)については2020年11月、たばこの害については2021年6月の特集で説明していますので、本日は呼吸器疾患のなかで忘れてはいけない感染症“結核”の話をしていきます。

結核って?

結核と聞いてどんなイメージをもたれますか?昔の病気ではないの?とおもわれるかもしれません。天才剣士といわれた、沖田総司も結核には勝てなかったと聞いたことがありませんか?その他にも、正岡子規、石川啄木、滝廉太郎なども若くして結核で亡くなっています。

日本では昭和20年ころまでは死亡原因の1位が結核であり、亡国病ともいわれていました。しかし第二次世界大戦後に結核薬やBCGワクチンの普及、衛生状態の改善により死亡者は激減しました。しかし、現在でも年間1万5千人以上の方が新たに結核を発症しています。

どうやってうつるの?

結核とは、結核菌を吸い込むことによって感染し、身体の抵抗力(免疫)が弱いときなどに、菌が増えて発病する感染症です。

結核を発病している人が、身体の外に菌を出すことを排菌といいます。この排菌をしている人が咳やくしゃみをすると、飛沫(しぶき)がとび、このしぶきに含まれる結核菌が空気中で飛び散り、それを周囲の人が吸い込むことにより“感染”します。

しかし全員が発病するわけではありません。結核に感染しても、通常は免疫機能が働いて結核菌の増殖が抑えられます。ところが栄養状態が悪かったり、加齢とともに体力が衰えたりすると、結核菌に免疫力が負けてしまい発病します。感染してから1年以内に発病する人は10%、感染後数年から数十年後に発病する人は20%、残りの約70%の人は一生発病しないといわれています。

発病するとどうなる?

肺結核の症状は、咳、痰、血痰、微熱、胸痛、体重減少、倦怠感など、風邪などの呼吸器系の病気とよく似ています。その為、ただの風邪と思い受診が遅れがちになることが多いです。

治るの?

昔は多くの人が亡くなりましたが、現在は薬も開発されきちんと薬を飲めば通常は治ります。ただし治療期間は通常6か月から1年程度はかかります。

初期症状は風邪と似ていますが、2週間以上せきや痰、微熱が続くようであれば、早めに受診をお願いします。

国立病院機構 福岡病院 呼吸器内科医長 石松 明子