心療内科ってなぁに? 第11回 “咳症状”ってなぁに?

“咳症状”ってなぁに?

今回からは、“ストレス”と“咳症状”の関係についての話です。

まずは、ストレスとの関係についてお話する前に、“咳症状”について知っていただきたいと思います。

咳の役割

皆さんは、どうして“咳”が生じるのか知っていますか?“咳”にはどのような役割があり、どのようなメカニズムで“咳”が生じると思いますか?

「咳の経験が無い」という方はいないのではないかと思いますが、皆さんは“咳”をしたことがありますか?また、どういった時に“咳”がでましたか?

風邪や肺炎など、病気をしたときに“咳症状”がありましたよね。“咳”をして、のどにからんでいた痰を出した経験があると思います。その他、しゃべりながら食事をしていたら、ふとした時に米粒や食べ物を飲み込んでしまってせき込んだことはありませんか?

“咳”の役割は、気道内に入ってきた異物を取り除くことです。これは「咳反射」と呼ばれる体の反応です。

医学的に“咳”を説明すると次のようになります。

  • 急速で深い吸気とそれに続く声門の即時閉鎖
  • 横隔膜の固定+呼気筋の迅速かつ強力な収縮によって引き起こされる胸腔内圧の瞬時増加
  • 空気が高速排出される圧力で声門は瞬間的に強制的に開き、それにより気道から異物を除去される

なんのこっちゃ・・・難しいですね。

風船を例にするとわかり易くなるかもしれません。膨らんでいる風船の出口に栓がしてあります。この状態で風船を両手で押すとどうなりますか?「ポン」と栓が飛んでいきますね。

“咳”とは、このような感じです。肺の中にある異物を気管まで押しやって、「ポン」と異物を体の外に出します。このようにして、私たちは、気道内にある異物を取り除いています。

咳と気道内の“異物”

風邪症状の場合は、ウイルスとの戦いよる残骸が“異物”になります。

肺炎の場合は、細菌や細菌と戦った細胞たちの残骸が“異物”となります。肺炎になると痰が多くなりますよね。

喘息の場合の“異物”は、処理しきれない痰になります。気道に炎症があると気管の上皮細胞、炎症に係る細胞の残骸、気道上の水分が多くなり、これらが痰になります。

また、慢性の炎症によって気道表面の神経が敏感(過敏)になってしまうので、痰が少なくても「何かへばりついている感じ」「違和感がある」などを感じやすくなり“咳”が出やすくなります。

若い時は“咳”はでなかったけど、年を取って“咳”が多くなった・・・、このように話される方もいます。年齢を重ねていくと「咳反射」や異物を外に出す機能が弱くなりがちです。気管内に異物がたまりやすい状況になり“咳”が出やすくなります。

また、高齢になると、飲み込みに関する筋肉も弱くなるので、食べ物が間違って気管の中に入ってしまう“誤嚥”という症状を引き起こすことがあります。肺炎を起こすこともあるので注意しましょう。

このように、人は“咳”をすることで、気道内にある“異物”を取り除いています。

皆さんが当たり前に行っている“咳”ですが、医学的に説明するにはどうしても難しい話になってしまいます。今回は“咳症状”の説明で終わってしまいました。

次回は“ストレス”がどのように関係しているかについてお話しましょう。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉