心療内科ってなぁに? 第16回 “咳症状”と“ストレス”との関係⑤

“咳症状”と“ストレス”との関係⑤

さて、これまでの話の中で説明したことをまとめます。

“咳”=「咳反射」には「神経」が大きく関わっています。“ストレス”にも「神経」が大きく関わっています。

“ストレス”が関係している“咳”の悪化や遷延化には、

“緊張”→“過敏になる”→“過敏に反応してしまう”
(緊張があると過敏になる、そして過敏に反応してしまう)

ということが関係しています。

「神経」が敏感になって、外界からの刺激に対して過敏に反応し過ぎてしまうことが、“長く続いている咳”につながっている・・・。 きちんと検査して、明らかな呼吸器系の病気が無ければ“ストレス”の関与も考えてみましょう。という話をしました。

ストレスそのものが、咳を誘発する?

患者さんから次のような質問を受けました。

“ストレス”があると“敏感”になって“咳”が出やすくなることはわかりました。

では、“ストレス”そのものが“咳”を誘発することはあるのですか?

ムムム、なかなか鋭い質問だな。このように感じたことを覚えています。

確かにそのような場合もあります。福岡病院には小児科もありますが、このパターンの“咳”が子供で生じていることがあります。過去の文献でもそういった報告があります。 子供の難治性の“咳”の症例について小児科の先生と話をするときは、この“咳”では?と鑑別に上げています。

大人では、“ストレスによって直接生じる咳”を診ることは非常に少なく、私の経験では1、2例くらいでしょうか。

“ストレス”の情報処理で重要な働きをしている「偏桃体」という脳の部位を刺激すると“咳”が誘発されることがわかっています。 “ストレス”が多くなりすぎると、この「偏桃体」を介して“咳”が誘発されるのでは?と推察しています。

この場合の“咳”は、気管内からの刺激“異物”とは関係ないので、「寝ている時は“咳”が全くでない」のが特徴です。 “ストレス”そのものが原因で“咳”を引き起こしているので、「脳」が休んでいる睡眠時は症状が出なくなります。 もしかしたら、このパターンが純粋な“心因性咳嗽”なのかもしれませんね。

ちなみに、気管内の“異物”が原因の場合は、「脳」を介さず「反射」で“咳”が生じるため、「寝ていても咳が出ます」「咳で起こされます」と患者さんは話されます。

我慢と咳

あと“咳”について話しておきたいことは・・・

“長く続いている咳”で受診された方の中に、「言いたい事」をぐっと、ずっと、我慢している方がいました。言いたいことが言えて「スッキリ」するたびに、“咳”がちょっとずつ良くなっていく、このような症例も経験したことがあります。科学的な話ではありませんが、嫌なことをぐっとため込んでいると、“咳”が出やすくなるかも・・・しれませんね。

“ストレス”と“咳”の話、いかがでしたか?

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉