心療内科ってなぁに? 第38回 治療に関するお話 番外編 “自然と健康学びの場⑤”

治療に関するお話 番外編 “自然と健康学びの場⑤”

2つ目の畝の完成
2つ目の畝

心理士の先生と患者さんと一緒に畝をつくっています。1回の作業時間は1時間弱と少ないのであまり進みませんが、2回行って2つ目の畝が完成しました。1つ目の畝は落ち葉をただ上に敷き詰めただけですが、ここの畝は少し土を掘り起こして、土と落ち葉を混ぜました。

患者さんは「まだまだ体調が戻りませんね」「作業した次の日は調子が落ちます」と話されていました。また、「作業をしている間は何も考えていないのでいいですね」「以前は一度調子を崩すと4~5日は引きずっていたけど、今は1日で戻るようになりました」とも話されていました。

脳を休める

ストレス関連の病気は「脳」の疲れが原因なので、「脳」を休めるように指導しています。横になって休むことは大切ですが、ずっと横になって休んでいればよくなるというわけではありません。横になり過ぎると「身体」の機能が低下してしまいます。また人によっては、横になっている時に“あれやこれや余計に考えて”しまい、逆効果の時もあります。

「脳」を休ませることは言うは易し、行うは難しです。「症状が重たい時は、横になる時間を十分にとって脳も身体も休めましょう」「休むことが出来て少し症状が軽減したら、できる範囲で日中に身体を動かしてみましょう」と指導しています。

脳のリハビリ

「脳」の調子がひどく落ちると、強い倦怠感を感じるようになります。一旦このような状態になると、「体=脳+身体」を動かそうとしても思うように動かなくなります(倦怠感ばかり感じます)。

このような時は「脳」や「神経」のリハビリが必要です。「身体」のリハビリと同じように、少しずつリハビリをしていくことが大切です。少しずつと言っても、「考える」ことを行う必要はありません。「身体」を動かすことを少しずつ行っていくことが大切です。

「身体」の動きは「脳」を刺激するので、「身体」を動かすだけで「脳」のリハビリになります。「脳」をあまり使わない単純作業は「脳」や「身体」の機能のリカバリーに良い印象です。自転車を用いた室内運動が、ストレス症状の改善に寄与したと記載されている論文もあります。

ただし、「身体」を使うといっても動かし過ぎは要注意です。「身体」を多く使うと「脳」の疲れも増えるので無理をするとよくありません。1日15分から始めて30分、1時間と時間を増やしていきましょう。

心療内科の患者さんは「考えることが好き」という特徴を持っているので、何もしていないと逆にいろいろ「考えてしまう」と言われます。多くの患者さんは、“何かしている方があまり考えなくて良い”と話されます。

自然の中での作業は“頭の中が空っぽ”になり“何も考えずに”あっという間に1時間がたちます。実際には「ここの根はかたいなぁ~どうしようか」「これは石かな?スコップが入らない」などと考えているのですが、自然を相手にしていると多く「考える」ことはありません。

「自然と健康学びの場」では、単純作業を行いながら「脳」と「身体」のリハビリを行っています。自然に触れ合うだけでも「脳」はリフレッシュできるようです。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉