心療内科ってなぁに? 第43回 “瞑想法”の補足②

“瞑想法”の補足②

当院では、“瞑想法”を「感じる」練習(「身体を通して感じる技術」を身に付けていく練習)として活用しています。「空の引き出し」を習得した後、目的となる「感じる」技術の練習に入ります。

呼吸を感じる

「呼吸を感じる」では、「空の引き出し」で誘導された“自然な呼吸”を意識して「感じる」ことができるように練習をします。具体的には「出たり入ったりしている空気を感じる」「口腔内、咽頭周囲の粘膜で空気の出入りを感じる」練習をしていきます。

このブログを読まれている皆さんは(当たり前ですが)いつも呼吸をしています。しかし、普段は空気の出入りを「感じて」はいません。面白い事に、意識を「感じる」に持っていくと、“空気の微細な動き”を「感じる」ことができるようになります。人の体は不思議ですね。

そして、この微細な感覚に意識を向けている時は、「考える」ことが行えなくなっています。瞑想法を深めていくと、「考える」ことと「感じる」ことは同時にできない(行ない難い)という体の法則を知ることができます。「考える」ことと「(身体を通して)感じる」ことでは、「脳」の別の部位を用いていると推察しています。

落ち着く

「呼吸を感じる」ができるようになったら、次に「落ち着く」練習をしていきます。

皆さんは、“落ち着いている状態”とはどのような状態であるか知っていますか?救急の現場では、「先ずは落ち着こう」「みんな落ち着いて」といった声が飛び交います。けれども、「どうやって行うのか知っている?」「どのような状態が落ち着いた状態?」と聞くと“??”という顔をされます。「深呼吸をします」という返事を聞くこともあります。けれども“どのような状態が落ち着いた状態?”の問いに対しての返事は聞いたことがありません。

ここで紹介している「落ち着く」練習をしていくと、これらの問いに対するヒントになると思います。人それぞれで、色々な答えがあると思います。大切なことは、救急の場面で意図的に“落ち着いている状態”になれること。皆さん自身の答えを見つけてみて下さい。

このブログでは“落ち着いている状態”とは「脳」が“落ち着いている状態”と定義しています。「脳神経系」が過剰興奮していない状態とも言えるでしょう。救急の場面でワタワタしている時、パニックの時は「脳」が落ち着いていない状態、過剰に活性化している状態になっていると考えています。

そして、“落ち着くための技術”のポイントは、「考える」ではなく「感じる」を意識してできるようになること。「脳」から距離が取れている場所で「感じる」ことができるようになると、より深く「落ち着き」を感じることができるようになります。

練習してこの「落ち着く」技術が身に付いてくると、救急の場面でも「落ち着く」状態にスッと数秒でなれるようになります。スポーツでも応用できるかもしれません。「身体の深いところで感じる」=「落ち着く」技術、皆さんも練習してみて下さい。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉