心療内科ってなぁに? 第52回 “薬”と「助けをもらう」②

“薬”と「助けをもらう」②

「助けをもらう」ことは結果として”脳への負荷”が減ります。一方、「自分で行った方が楽(早い)」は”脳への負荷”が増えてしまいます。このように説明していたら「どうしてですか?」「わかり難い」「難しいです」という意見があったので、詳しく説明したいと思います。

一人で何でもやってしまう人が置かれている状況

“周りの人からの助けを求めないで全部自分で行う”、そのような人はどのような状況にいるでしょうか? 想像してみてください。もし助けをもらうことができないと、立案・計画・情報収集・材料集め・実行など全部一人で行わなくてはいけなくなります。そして、それぞれに対して「考える」という事が必要となり、結果として「考える」=「脳を使う」ことが増えてしまいます。助けをもらわず一人で行っている時は、複数人で行っている時よりも“体力=身体のエネルギー”と“脳の体力=脳のエネルギー”どちらも多く消費してしまいます。

心療内科を受診する患者さんは、“頑張ろう”とする方が多い様な気がします。小さい時の環境要因が一因になっているかもしれません。

  • 長男だから責任を持ちなさい、頑張りなさい
  • 忙しいからあとで
  • (助けを求めても)話を聞いてもらえない
  • (お兄ちゃんやお姉ちゃんが怒られているのを見て)自分は怒られないように注意しよう
  • お父さんお母さんが喧嘩しないように気を遣う
  • 人との交流が苦手だった など。

このような理由から、「一人で、何でもやってしまう」という行動が癖になってしまった患者さんを多く診てきました。「何でも一人で行う」と「助けを求める」は裏表の関係で、どちらが強すぎても病気になってしまいます。心療内科を受診する患者さんは「何でも一人で行う」ことが得意で「助けを求める」ことは苦手な様です。

まずは“薬”の手助けをもらってみましょう

少しでも、「任せる」ことや「頼む」ことができれば、その分だけ「考える」ことは少なくなり、”脳”は休む(脳を温存する)ことができるようになります。しかし、これらの事が苦手な人、これまで練習したことがなかった人、そもそも「任せる」という概念がなかった人にとっては難しい技術のようです。外来では、「まずは“薬”の手助けをもらってみましょう」と伝えています。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉