心療内科ってなぁに? 第53回 “薬”との付き合い方

“薬”との付き合い方

「“薬”との付き合い方は人付き合いと同じですよ」と、話しています。

対人関係では「この人嫌だな~」と感じている人ほど、なかなか離れられないと感じることがあります。一方、「この人には助けてもらってありがたい」や「この人と一緒にいると心地よい」と感じている人とは、いつの間にか距離が遠くなっていることがあります。「嫌な人」とは長く付き合うようになり、「心地よい人」とは短い付き合いになってしまった。このような経験はありませんか? 同じように、“薬”に対して「嫌だな~」と感じている人ほど、“薬”から離れることができないようです。一方、「手助けをもらっている」と自覚している方は、薬との距離が遠くなっていくようです。

薬に頼るのが嫌で我慢していたら

このような患者さんがいました。“薬”を飲むと症状が軽くなって調子がいいけれど、なんとなく“薬に頼るのが嫌”で“薬を飲むと負けたように感じる”から、“できるだけ我慢”して“薬”を飲まないようにしていました。この患者さんは、どのような結果になったでしょうか?外来で診察した時、この患者さんは少しきつそうな感じでした。“薬を飲んだ方がよい?それとも飲まない方が良い?”“あの時に飲んでいたら楽だったかも”“これからもずっと薬を飲まないといけない?”など、“薬”について以前よりも多く考えるようになって「脳」を使っていました。

症状があることは“嫌な”事です。繰り返し“嫌な”事を感じ続けていると“嫌な”記憶が「脳」の中で増えていきます。その記憶は「もしかしたら、また“嫌な” ことが起こるかもしれない」と、新な“考えること”を生み出し、その結果“不安”“予期不安”が増えていきます。症状は体にとってアラート信号(危険や異常を教えてくれる信号)なので完全に消すことは勧めませんが、できるだけ減らして上手に対応することが大切です。“動悸”“息切れ”“気分不良”“食欲不振”“不安感”などの症状が“薬”で減るのであれば、“薬”を上手に使う事を勧めています。ただし、患者さんの中には、症状があるとすぐに“薬”に手を出す人もいるので、習慣化しないようにすることが大切です。

ポイントは“薬”を使う前にワンクッションおくことです。

  1. まず大きく深呼吸をしましょう。
  2. 10分程度様子を見てみましょう(気を紛らわせるなど、薬以外の方法があればためしてみましょう)。
    それでも症状が続く場合には、
  3. 我慢せずに薬を使いましょう と、患者さんに伝えています。

突然ですが問題です。この花なあに?

ヒント1:ある物を土に植えたらきれいに咲きました。

ヒント2:皆さんもよく食べているのでは?

答えは次回に。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉