心療内科ってなぁに? 第61回 ある医師の独り言

最近、色々忘れることが多くなったなぁ~。

患者さんからは、まだまだ若いのに・・・といわれるかもしれないけれど。

以前から兆候がありました。患者さんの顔は覚えているが、名前が出てこない。

あの患者さんはどうなったかな?コンピューターの前に座ってカルテを開こうとすると、ふと手が止まってしまう。名前がでてこない。苗字の頭文字がわかれば芋ずる式にでてくるのだけど、なかなか思い出せない。ひと時ボーっと座っていると、ふっと名前を思い出す。カンファレンスで同僚と話しているときも名前が出てこない・・・。「あ~その人の話ですね」「あ~あの人は△△となりました」“あ~”と言いながら、会議は進んでいきます(ちなみに同僚も同世代です)。そうこうしていると、ふっとその人の名前を思い出します。

新しい薬の名前がなかなか覚えられません。覚えても使っていないと忘れてしまいます。

薬の名前は基本カタカナ名です。英語由来の物もありますし、何かと何かの意味がくっ付いて新たに作られた名前もあります(結局意味が分かりにくくなっています)。○○スタチンとくれば高脂血症を改善するお薬、○○マブとくれば生物学的製剤、となんとなくわかります。けれども、最近は○○マブにも作用点が全く異なるものもあり、間違っては大変と覚えるのに苦労します。その上、一般名(薬品そのものの名前)の他に、商品名が別にあります。何で名前が複数あるのか!?

最近は、ジェネリック薬の普及のおかげで臨床現場の中で一般薬品名を使用する機会が多くなりました。もう、全部ジェネリックみたいにして、○○(メーカー名)の××(一般薬品名)として欲しい、とも思います。けれども一般薬品名を覚えることが難しいことには変わりありません。ふと、日本メーカーのわかり易い商品名を思い出します。便が出やすいように「○○出る」という名前。睡眠を連想される「睡眠」をもじった名前。必ず会社名の一部が名前の初めに来るもの。このような名前の薬は今でもすぐに口に出して言うことができます。

そもそも、薬の名前を忘れてしまう、新しいお薬の名前が覚えられないのは、名前が難しいからなのか、脳が劣化したからなのか???

記憶力が低下することは悪いことばかりではありません。

大切なこと?良いこと?も忘れるかもしれないが、嫌なことも忘れることができます!?

よし!気分を新たにして明日への一歩を踏み出そう!(と日々思っています)?

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉