心療内科ってなぁに? 第62回 “脳”が疲弊しやすい世の中

“脳”が疲弊しやすい世の中になっています。科学技術がどんどん開発されて、情報のやり取りが多くなっています。特に都市部で子どもや青年のデジタル情報への露出が増加しています。学校でも勉強!勉強!と“脳”を使うことが増えてきました。

私たちが子どもの頃はこんなに“脳”を使っていたでしょうか?ダンゴムシを捕まえて遊んでいたことを覚えています。土団子を作って陰干してはゴシゴシ磨いていたことを思い出します。よく、団地の友達と、ビー玉、缶蹴り、野球をしていたな~と記憶がよみがえります。

“脳”を使いすぎると

さて、スマートフォンに多くのアプリを入れるとどうなるでしょうか?動画など情報量の多いコンテンツを複数扱うとコンピューターはどうなるでしょうか?動きが遅くなり、シャットダウンできなくなったことを経験したことはありませんか?スマートフォンやコンピューターでは、処理される情報が過剰になり、オーバーワークが長く続くと、これらの機器で機能的な障害が生じます。動きが遅くなり、シャットダウンできなくなるといった症状を引き起こします。

“脳”も同じです。“脳”はスマートフォンやコンピューターと同じ“物質”です。ここまで言い切るのはどうか?と思った時もありましたが、外来で患者さんに関わっているとこのように感じます。

多くのデジタル情報を扱ったり考え過ぎたりすると、“脳”の機能障害が生じます。使い過ぎると調子が悪くなりますし、“情報”を多く入れすぎると動きが遅くなります。古くなるとスペックが落ちてきますし、限界もあります。“脳”は大切な道具であり貴重な財産です。

“脳”を大切に、余裕を持って使っていると

温存しないでどんどん使って疲弊すると、“脳”も適切に動かなくなる、ということに気が付きます。一方、「休む」「休ませる」というスキルを身に付けると、まだまだ動くのだな・・・とも感じます。できるだけ“脳”を“大切に” “余裕を持って”使っていると、いざという時にトラブルなく使うことができます。年を取って“脳”が古くなったとしても、日ごろから メインテナンスしながら“上手に” “大切に”使っていると、必要なときに意外とサクサク動きます。スマートフォンと同じですね。

デジタル情報があふれて“脳”が疲弊しやすい世の中になっています。「“脳”には限界があるので大切に使ってくださいね。」と、若い人たちに伝えています(ちなみに“身体”にも限界があります)。楽しいことが増えるように、楽しい未来になるように、大切に“脳”と“身体”を使っていきたいですね。そうすれば“脳”と“身体”も喜んでくれると思います。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉