心療内科ってなぁに? 第65回 私は認知症?

私は認知症?

よく?ときどき?「私は認知症ですか?」「認知症が心配です」このように話される患者さんがいます。返事に困っていると、「そうですよね(認知症ですよね)」と言葉をかぶせて同意を求めてくる患者さんもいます。

 

「認知症」の症状は、短期記憶:直近の体験を覚えているかどうか?で簡易的に判断します(スクリーニングします)。短期記憶をチェックできる質問紙があり、臨床で活用しています。私は「認知症」の専門家ではないのですが、心療内科は「脳」に関連する症状に日々対応しているので、外来や入院患者さんの相談を受けることがあります。その経験の中で気が付いたことは、患者さん本人が「認知症では?」と悩んでいる方の多くは、「認知症」ではないという事です。

 

「私は認知症ですよね、そうですよね」・・・時には確信的に意見を求めてくる患者さんもいますが、このような患者さんは、「認知症」というよりも、「考えすぎ」「脳を使い過ぎ」で不安が多くなっている「心配症」であることがほとんどです。どうしてかな?と考えていると、あることに気が付きました。本当に「認知症」の人は、本人が心配になって病院を受診するのではなく、家族が心配になって患者さんを連れてきます。また、「認知症」の人は自分が「認知症」?記憶力が低下している?かどうかについて、あまり(全く)気にしていないようです。不安になれる人は、自分自身を客観的にみることができています。自分自身の症状について観察することができ、そして「自分の記憶力」が低下した?と判断することができているからこそ、“悩んで”“脳を多く使って”不安になってしまいます。

 

「認知症では?」と悩んでいる患者さんは「認知症ではない」。もちろん境界域の方もいるので、この評価のやり方は少し極端すぎると思いますが、意外と使いやすくわかり易い?とも思っています。皆さんはどのように感じましたか?

 

外来で「認知症ではない」ですよ、「心配性です」と説明すると、本人は“う~ん”“納得がいかない”といった反応を示しますが、一緒に来られている家族は“それみたことか”“気にし過ぎよ!”とちょっとだけ嬉しそうな反応を示されます。そばでみている人が一番わかっているのかもしれませんね。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉