心療内科ってなぁに? 第67回 心と体の関係②「脳マラソン」の症状

心と体の関係② 「脳マラソン」の症状

 

先月「脳マラソン」について説明しました。この「脳マラソン」続けていると、どのような症状が出てくるでしょうか?

 

実をいうと「脳マラソン」の症状と「身体マラソン」の症状とは同じです。

 

日常診療の中で、患者さんは「脳」を“多く使っている” “休みなく使っている”そして“身体にも色々な症状が出ている” “どうして多彩な症状がでる?”と考えているときに、ふっと「身体マラソン」と同じではないか!ということに気が付きました。

 

身体も脳も使い過ぎると疲弊する

先ずは「身体マラソン」の症状をみていきましょう。身体を酷使した時どのような症状がでますか?「身体マラソン」を行った時のことを思い出してみましょう、もしくはテレビで「マラソン中継」を見てみましょう。「身体マラソン」を行った後は、疲れ,倦怠感(だるさ),食欲不振といった症状、息切れ,過換気,動悸,筋肉痛といった症状、皮膚がピリピリする、興奮がつづく、夜眠れないなど、いろいろな症状が出てきます。

 

それでは「身体マラソン」の症状と「脳マラソン」の症状とを比べてみましょう。以前に“ストレス関連の病気”では、抑うつ・不安・神経過敏などの精神症状動悸・息切れ・咳・食欲不振・ムカムカ・下痢・めまい・肩こり・筋肉痛などの身体の症状が生じますと書きました。ん?これらの症状は「身体マラソン」の症状と似ていませんか?

 

「身体マラソン」をすると、“身体が疲弊する → もう動けない”になります。同じように「脳マラソン」=「脳を使いすぎる」と、“脳が疲弊する → 脳が動かない → 何もしたくない(意欲の低下・興味の喪失)”になります。

「身体マラソン」をすると、“身体がとても疲れる”と同時に、“身体や頭が敏感になります”。同じように「脳マラソン」= 「脳を使いすぎる」と、“脳神経が敏感になる → 音や光、周りの目線に過敏になる → 情報過多になりやすい → 敏感になり過ぎて不安もでてくる”になります。

 

「脳マラソン」症状のしくみ

「身体マラソン」では、体内の酸素が不足して“息切れや過換気(呼吸が早くなる)”といった症状がでますが、「脳マラソン」でも“息切れや過換気”といった症状が生じます。「身体マラソン」と違うことは、「身体」の異常データはない(乏しい)という事です。「脳」が疲れても“息苦しい”といった症状が出てきますが、実際は身体の酸素は足りていてパルスオキシメーターでは正常値を示します。酸素が足りないと「脳」が錯覚しているのでしょうか?

 

「身体マラソン」では、消化器系の動きが悪くなり“食欲低下や胃部不快(ムカムカ)”といった症状が生じます。また、血流を増やすために心拍数があがり“動悸”を感じるようになります。もちろん筋肉を酷使するので“筋肉痛”が生じます。「脳マラソン」でも“食欲低下や胃部不快(ムカムカ)” “動悸”や“筋肉痛(肩こり)”が生じます。「身体」を多く動かしていないのですが、これらの症状が生じます。「脳」が疲れすぎて、自律神経を介して生じる症状と考えています。

 

 いかがでしょうか?「脳マラソン」=「脳を使いすぎた」ときの症状は、「身体マラソン」=「身体を使い過ぎた」ときの症状と同じだと思いませんか?

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉