<心療内科ってなぁに?第119回 心の成長(病気と健康)の話(6) 「肺」の話>
“心”は“体の運転手”。第2週は“心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得”や“どのようにしたら行動は成長する?”についての話です。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し、健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。
今回は「肺」に関係する話です。
皆さんも知っているように「肺」は呼吸と関係しています。息を吸うと口から入ってきた空気は気管を通って肺に広がります。肺はスポンジのような構造をしていて、空間(肺胞空)と網目(組織)があります。網目(組織)には血管が入っており、酸素と二酸化炭素は血管の壁を通過することができます。肺は広がったり縮んだりすることで、空気中の酸素を取り込み、体内で発生した二酸化炭素を身体の外に出しています。スポンジ空間(肺胞)の表面積はテニスコート1面分あり、この広い面積をフルに活用して「肺」は体内の酸素や二酸化炭素の量を調整しています。
「肺」の病気の一つに慢性閉塞性肺疾患(COPD)というものがあります。このCOPDという病気は喫煙と関係しています。タバコが好きで止めることができず、長期にわたって吸っているとCOPDという病気になってしまいます。タバコの煙には不純物が含まれており、肺の中に入ると肺胞の壁に引っ付きます。煙の多い焼肉屋では壁や天井が煙で黒くなっていますよね。肺の中もこのようになっ
てしまいます。ある程度のベタベタは細胞によって掃除されますが、過剰なベタベタがあると細胞は処理しきれなくなってしまいます。スポンジ空間の表面についたタバコの不純物は人の体にとって異物なので、免疫細胞が処理に駆け付けます。この細胞は体内に細菌が入ってきた場合に炎症を起こしながらやっつける役割を持っています。タバコの不純物を処理する際にも炎症反応が生じ、不純物を多く処理する際は炎症反応でスポンジの網目も壊れてしまいます。長期にわたってタバコを吸っていると、少しずつ網目は壊れていき、スポンジの空間がつながってどんどん大きくなり、虫食い状態みたいになってしまいます。このようになると、酸素と二酸化炭素の交換能力が低下し、少しの動作で息切れが生じます。“好きな事、得意な事の向こう側に病気がある”でしたね。タバコの不純物は「肺」に良くないので「喫煙行動」に注意しましょう。
「肺」には空気と共にばい菌やほこりが入ってきます。ばい菌やほこりはエアコンのフィルターのようにキャッチされ体内に入ることはありません。キャッチされたばい菌やほこりは、痰として体外に放出されるか、免疫細胞によってきれいに掃除されます。このような機能によって、「肺」の中はばい菌がいない無菌の状態に保たれています。しかし何らかの理由で「肺」の換気が悪くなると、嫌気性菌や粘膜産生菌が増えていきます。これらは肺の中に住み着いてしまう菌で、薬に対して抵抗性を持っているので増えないように注意する必要があります(ばい菌の中には、酸素が無いと生きていけない好気性菌、酸素が無くても生きることができる嫌気性菌があります。また、ムコイドという粘膜をまとって抗生剤が効き難くなる菌がいます。嫌気性菌やムコイドを持った粘膜産生菌が手ごわい菌になります)。
家でカビやばい菌が生えないようにするためには、換気が大切ですよね。皆さんの家と同じように、「肺」も換気が大切です。換気が悪くなると手ごわい菌が増える環境になるので、隅々まで空気がいきわたるように、ゆっくり大きな呼吸を意識してください。嫌気性菌は文字通り空気が嫌いで空気がある所(換気が行き届いている所)では繁殖できなくなります。また、粘膜でカバーされた菌は空気に触れると粘膜を産生しなくなり普通の菌に戻ります。
人にとって呼吸(酸素を取り入れ二酸化炭素を出すこと)そのものも大切な行為です。効率よく空気を換気する際の大切なポイントがリラックスして呼吸をすることです。力を入れて呼吸を行うと、空気の入り方が不均一になり隅々まで空気が入りません。難しいかもしれませんが、日ごろからリラックスして呼吸を行うことを心がけてみてください。
ばい菌に負けないためには、体力を維持することも大切です。肺炎になって入院する方を診ていると、多くの方は引っ越しや大きなイベントなどで、数カ月間忙しく動いて体力を消耗しています。体力の消耗は免疫力の低下につながり、肺の中のばい菌処理能力を低下させてしまいます。動き過ぎない、無理し過ぎないことが、肺炎の予防にも大切です。
まとめると、空気をよくいきわたらせること、無理をしないことが、肺炎の予防になります。「肺」の健康を保つために、目に見える形で「ゆっくり大きな呼吸を練習する」「休みをとる」という「行動」を行っていきましょう。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
