<心療内科ってなぁに? 第129回 症状ってなぁに?(3) ホメオスターシス(生体恒常性)の話>
“心” は “体の運転手”。 メンテナンス技術と運転技術(ドライビング技術)、これらの技術を身に着けていくことが、「心Coro Heartの成長=行動の成長」につながります。“体(脳+身体)の使い方=運転技術” を習得し、健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。
“健康な状態” とは、私たちの体が最適な状態であることです。
“症状” は危険信号(アラートサイン)です。「体の運転手」「心=Coro Heart」が体からの訴えに耳を傾けずに、体(脳や身体)の機能を超えて無理して使うと生じます。
スマートフォンで例えると、機能以上の情報が一度に入ってくると処理中のサイン(クルクルサイン)が出て画面が止まる、電池が少なくなった時に出てくるサインなどです。車で例えると、ガソリンが少なくなったという点滅信号、スピードを出しすぎた時に鳴る危険音になります。これらは、スマートフォンや車の“症状”です。
「ホメオスターシス(生体恒常性)」という言葉を定義したウォルター・B・キャノン博士は、“吠える犬に怯える猫” の副腎髄質からアドレナリンが分泌されるとともに、交感神経・副腎髄質系の自律神経興奮を引き起こすことを発見しました。“怯えて興奮した猫” は「戦う」か「逃げる」かの選択を余儀なくされ、瞳孔が拡張し、唾液と胃液の分泌が抑制され、胃腸の運動性が低下し、心拍数が増加し、血圧が上昇し、骨格筋への血流が減少しました。 また、血糖値の上昇、赤血球や白血球の増加などの身体的な変化も生じたと発表しました。
「吠える犬」という “猫” にとって心理社会的なイベントは目や耳で感知されます。これらの情報は、①受容体を介して脳に入力され、②脳という制御センターによって処理された後、③脳から身体への情報(反応するための情報)が脳より出力されて、色々な身体反応を引き起こします。私たちも同様に、強い刺激を感受した際には、恒常性を維持するために①~③の要素を介して、瞳孔、胃腸、心血管、骨格筋、血糖や栄養、免疫細胞の変化がもたらされます。
「ホメオスターシス(生体恒常性)」という言葉やメカニズムは難しいので、とっつきにくいと感じると思いますが “3つの要素が大切” と覚えておいてください。これらの要素は、ホメオスターシスだけでなく「行動の成長(行動の恒常性)」のところでも出てきます。知っておいてください。
- 情報の入力(受容体)
- 情報の処理(脳という制御センター)
- 情報の出力(脳から身体への情報)
という3つの要素です。
医学の専門的な話が多くなりましたね。
私たちは自然界や社会といった多くの刺激(ストレス)の中で、情報(刺激)を①感知し、②脳で処理し、③反応して、環境に適応しています。
「ホメオスターシス(生体恒常性)の維持」には、体温調節メカニズム、ホルモン調節メカニズム、免疫調節メカニズムだけでなく、調節遺伝子発現や行動調節など、多くの機能が関わっています。人の体はとても精密にできています。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
